残業拒否すると解雇される? 残業を断れない場合の対処法を解説

2025年08月28日
  • 不当解雇・退職勧奨
  • 残業拒否
  • 解雇
残業拒否すると解雇される? 残業を断れない場合の対処法を解説

岐阜県の毎月勤労統計調査によると、令和6年における所定外労働時間の平均時間は11.4時間(事業所規模30人以上)で前年比10.5%増でした。

会社からの残業が負担と感じつつも命令を拒否したら解雇や減給をされてしまうのではと不安になる方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、残業拒否による解雇の問題、断れないときの対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士が解説します。


労働問題を弁護士に相談 労働問題を弁護士に相談

1、残業拒否すると解雇される?

残業拒否すると解雇されるかどうかは、会社側の「残業命令」や労働者側の「拒否理由」の正当性によって判断が異なります。

つまり、法令に基づいた正当な残業命令であっても、労働者に健康や家庭の事情など「正当な理由」がある場合、残業を拒否できます(正当な理由の詳細は2章で後述します)。

労働者の正当な理由に基づいた残業拒否に対して、会社側が解雇や減給などの処分を下すことは認められません。

ただし、正当な理由なく残業を拒否した場合は、戒告・減給・降格などの懲戒処分を受ける可能性があります。これらの処分を受けても、なお残業の拒否を繰り返した際は、解雇されるケースもあるでしょう。

2、残業命令を拒否できる5つのケース

会社から残業命令を出された場合、必ずしも従う必要はありません。しかし、残業を拒否する際には、自身の状況が「正当な理由」とされるかどうかをしっかり確認することが重要です

具体的には、以下のようなケースであれば残業を拒否できる可能性があります。

  1. (1)業務上の必要性がない

    業務上の必要性がない場合、会社は労働者に対して残業を命じられないため、指示されたとしても拒否が可能です。

    たとえば、嫌がらせ目的で全く急ぎではない仕事を当日中に終わらせるよう言われたり、理由なく残るよう命じられたりしたケースなどが該当します。

    業務上の合理的な理由がなければ、正当な残業命令とはいえません。必要性の低い残業を命じられた場合は、断りましょう。

  2. (2)体調不良・健康を害するおそれがある

    体調不良であったり健康を害するおそれがあったりする場合、残業を拒否できます。会社には、労働者に対する「安全配慮義務」があるためです。

    安全配慮義務とは、労働者の生命や身体などの安全を守るために必要な配慮をしなければならないという義務です。

    病気やケガをしている場合や残業によって体調を崩すおそれがあることが明確な場合は、正当な理由として残業命令の拒否が認められます。

  3. (3)妊娠中または出産してから1年未満

    妊娠中または出産してから1年未満であることも、残業命令を拒否できる理由のひとつです。

    労働基準法では、妊産婦が希望した場合には残業や休日労働・深夜業をさせてはならないと規定されています

    労働基準法における妊産婦とは、妊娠中および産後1年を経過していない女性です。対象者である場合は、残業を命じられたとしても無理に従う必要はありません。

  4. (4)育児・介護の必要がある

    育児や介護の必要がある場合は、残業命令を拒否できる可能性があります

    具体的には、小学校就学前の子どもの養育や、要介護状態にある対象家族の介護を理由として事前に申請した場合は残業が免除されます。対象家族とは、事実婚を含む配偶者・父母・子ども・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫です。

    また、36(さぶろく)協定※により労働時間を延長する場合も、上記の労働者は月24時間・年150時間を超える延長は拒否できます。
    ※労使間で締結する「時間外・休日労働に関する協定」

    ただし、以下のケースに当てはまる場合などは、例外的に残業や規定時間を超える労働時間の延長を命じることが認められています。

    • 事業の正常な運営を妨げる場合
    • 継続雇用期間が1年に満たない場合でかつ、労使協定で対象者から除外されている場合
    • 残業規制の対象外と定められた労働者である場合


    育児や介護で残業が困難な場合は、例外的なケースに当てはまらないことを確認した上で申請を行いましょう。

  5. (5)残業時間が上限を超えている

    残業時間が上限を超えている場合も、残業命令を拒否できます。

    36協定における残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間です。この上限を超えて残業できる特別条項を定めた場合であっても、月100時間以内・年720時間未満などの制限があります。

    法令で定められた上限を超える残業命令は違法であるため、締結した36協定を確認の上拒否しましょう。

まずはお気軽に
お問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
メールでのお問い合わせ
営業時間外はメールでお問い合わせください。

3、残業を拒否したい! 対処法4つ

正当な理由があるものの残業を断れない場合、まずは自身の状況を整理し、適切な機関への相談を検討しましょう。以下では、残業を拒否できずに困っているときの対処法を4つ紹介します。

  1. (1)36協定を締結・届け出しているか、就業規則を確認する

    まず確認すべきなのは、会社が36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ているかどうかです。36協定の締結・届け出をしていなければ、原則として会社は従業員に対して残業を命じることはできません

    また、雇用契約書や就業規則に時間外労働がある旨が明記されているかどうかも重要です。

    これらが不明確であれば、残業命令そのものが認められない可能性があります。可能であれば、会社の労務担当者や人事部に確認してみましょう。

  2. (2)体調不良の場合は診断書を用意する

    体調不良で残業命令を拒否する場合は、診断書の提出が必要となる場合があります。

    特に過労やストレスなどは外見での判断が難しいため、診断書によって心身の状態を客観的に証明することが重要です

    医療機関を受診して診断書を提出することで、正当な理由として残業を拒否できます。口頭だけでは認めてもらえない場合には、診断書を用意しましょう。

  3. (3)労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談する

    会社側が法令違反をしている疑いがある場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談しましょう

    これらの機関では、無料で労働トラブルの相談に対応しています。

    判断に悩んでいるときや、どこに相談すべきかわからないときは、まず総合労働相談コーナーを利用するのがおすすめです。総合労働相談コーナーはあらゆる分野の労働問題を対象としており、解決に向けたアドバイスを提供してくれます。

  4. (4)弁護士に相談する

    残業命令が明らかに不当である、または拒否によって処分を受けそうになっている場合は、弁護士への相談が有効です

    弁護士に相談することで、残業命令の正当性や対処法に関するアドバイスを得られます。

    また、会社との交渉も弁護士に任せられるため、直接交渉する必要がなくなるメリットもあります。

4、労働トラブルを弁護士に相談するメリット

残業命令に関するトラブルや不当な処分に悩んでいる場合は、早めに弁護士に相談することが望ましいです。労働トラブルを弁護士に相談すると、以下のようなメリットがあります。

  1. (1)正当な残業命令かどうかを法的に判断できる

    弁護士であれば、会社からの残業命令が法的に正当なものかどうか判断できます。法令に違反している疑いがあったとしても、労働者側が判断するのは難しい場合も多いでしょう。

    たとえば、36協定が締結されていない・残業の必要性が不明確など、残業命令が適法性を欠いているケースはさまざまです。

    弁護士に相談することで、会社側の対応が法律にのっとったものかどうかを明確にできます。

  2. (2)不当解雇の場合、慰謝料や未払い残業代の請求を検討できる

    弁護士は、不当解雇による慰謝料や未払い残業代の請求にも対応が可能です。

    もし残業拒否によって解雇や不利益な扱いを受けた場合は、会社との交渉や金銭的な補償対応も含めてサポートできます。

    また、法的に有効な証拠の収集や整理についてもアドバイスできるため、訴訟に発展した際の備えとしても有効です。

  3. (3)精神的ストレスを軽減できる

    弁護士に相談することで、精神的ストレスを軽減できるメリットもあります。

    労働トラブルに直面すると、会社との交渉や生活不安にプレッシャーを感じ、精神的に追い詰められてしまう方も少なくありません。そうした不安の中では、第三者として交渉や手続きを代行できる弁護士の存在が安心材料になります。

    相談することで自身の状況を客観的に把握できるため、取るべき行動も明確になりやすいでしょう。

5、まとめ

正当な理由がなく残業を拒否した場合、解雇や減給などの懲戒処分を受ける可能性があります。ただし、正当な理由がある場合は、残業を拒否しても問題ありません。

残業拒否ができないときには、まず36協定の締結有無や就業規則・雇用契約書の記載を確認しましょう。

自分ひとりでの解決が難しい場合には、正当な残業命令かどうかを法的に判断するためにも弁護士への相談をおすすめします。自分の身を守るためには、正確な情報をもとに、適切な行動を取ることが大切です。

残業命令の正当性を知りたい場合や拒否することに不安がある場合には、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています