家族が窃盗で逮捕された! どうすればいい?
- 財産事件
- 窃盗
- 逮捕
岐阜県警察署が公表している犯罪統計に関する資料(刑法犯の概況)によると、令和3年の刑法犯認知件数は、9479件であり、そのうち窃盗犯の認知件数は、6075件でした。窃盗犯が占める割合は、全体の64.1%であり、犯罪全体に占める窃盗事件の割合が多いことがわかります。
出来心からお店の商品を盗んでしまったという場合でも窃盗罪に該当し、場合によっては逮捕されてしまう可能性もあります。突然、家族が逮捕されてしまった場合には、どのように対応すればよいかわからずつい慌ててしまいますが、落ち着いて行動することが大切です。そのためには、窃盗罪で逮捕された場合の流れや家族としてできることを知っておく必要があります。
今回は、窃盗で逮捕された場合の流れと家族ができることなどについて、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士が解説します。
1、窃盗で逮捕された場合、その後どうなるのか?
窃盗で逮捕された場合には、以下のような流れで刑事手続が進んでいきます。
-
(1)逮捕
窃盗すべてのケースで逮捕されるわけではありません。被害金額が少ない万引きや、被害者と示談が成立した場合などでは、微罪処分(注:警察限りで処理し、事件化しないこと)や在宅(注:逮捕されずに捜査が進むこと)になることもあります。しかし、重大、悪質なケース(被害額が大きい、計画性が高い、組織的、繰り返し窃盗を行っているなど)では、逮捕される可能性が高くなります。
犯罪をしたと疑われて逮捕されると、ほとんどの場合には、警察署の留置施設で身柄を拘束されます。逮捕には法律上、厳格な時間制限がありますので、被疑者を逮捕した警察官は、48時間以内に検察官に被疑者の身柄を送致するか、これをしないときには、釈放しなければなりません。 -
(2)勾留
警察から被疑者の身柄の送致を受けた検察官は、被疑者の弁解を聴いたうえで、送致を受けてから24時間の間に被疑者の身柄を解放するか、裁判所に対して勾留請求をするか判断します。検察官が裁判所に対する勾留請求を行い、裁判官がこれを認めると、原則として10日間、被疑者の身柄が拘束されます。この場合、引き続き、警察の留置施設で身柄が拘束されることになります。
その間に必要な捜査が終わらない場合には、検察官が裁判所に勾留延長請求を行い、裁判官が認めれば、身柄拘束がさらに10日間、継続することになります。
このように窃盗で逮捕されると、逮捕されてから最大23日間、身柄拘束が続くことになります。 -
(3)起訴または不起訴
検察官は、勾留が認められている期間が満了するまでの間に、事件を起訴するか判断します。事件の重さ、被害者との示談、被疑者本人の態度など諸事情を踏まえて検察官が判断し、不起訴や処分保留になることもあります。不起訴や処分保留のまま勾留期間が満了すれば、身柄が解放されますし、場合によっては、期間満了前に不起訴処分に伴って身柄が釈放されることもあります。
-
(4)刑事裁判
窃盗事件に対する刑事裁判の手続は、以下の2種類があります。
① 略式手続
略式手続とは、公開の法廷での審理が行われることなく、検察官が提出した書面のみの審理で、罰金または科料の刑罰を言い渡す裁判手続のことです。法廷での反論の機会がないため、被疑者の同意がなければ利用することはできません。
略式手続によって裁判官が出す略式命令では、100万円以下の罰金か科料の刑罰しか科すことができませんので、懲役刑や禁錮刑が科されることはありません。罰金を納めない場合は、財産に対する強制執行が行われ、これによっても罰金が回収されないときは、労役場に留置され、労務作業に従事させられます。
② 通常裁判
窃盗行為の重さその他諸事情を考慮して、検察官が正式な裁判手続によることが相当と判断した場合や、被疑者が略式手続によることに同意しない場合は、通常の裁判が行われます。この場合には、ニュースやドラマなどで目にするような公開の法廷で審理が行われ、裁判官が被告人に対して判決を言い渡すことで、裁判手続が完結します。
2、窃盗罪の刑の重さ
窃盗罪の法定刑は、「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」とされます(刑法235条)。
窃盗罪にはさまざまなものがあり、万引き、空き巣、ひったくりのほか、オレオレ詐欺の出し子が銀行から不正に預金を引き出す行為も窃盗罪にあたります。窃盗には比較的軽微なものから重大なものが広く含まれるため、課される刑罰は、具体的事情によります。
なお、裁判官が量刑を定める際には、一般的に以下のような事情を考慮しています。
- 犯行に至る経緯
- 犯行の動機、目的
- 計画性の有無
- 犯行態様の悪質性
- 結果の重大性
- 被告人の年齢、成育歴
- 被告人の前科、前歴の有無
- 示談による被害回復の有無
- 被告人の反省
3、家族としてできること
窃盗罪で逮捕されてしまった場合には、ご家族は、以下のようなサポートをしてあげるとよいでしょう。
-
(1)弁護士への相談
突然、家族が逮捕されたら、動揺し、冷静な行動ができなくなってしまうのが通常です。
まずは弁護士に相談をして、刑事手続の流れを説明してもらったうえで、家族ができること、すべきことについて助言を受けることが大切です。事案によっては、身柄解放や有利な処分獲得が早期に望めるため、弁護士への依頼も積極的に検討しましょう。逮捕されてから、勾留されるまでの間に被疑者本人と面会することができるのは弁護士だけです。家族であっても、勾留されるまでの間は本人とは面会をすることはできませんし、勾留後も弁護士以外との面会が禁止されることもあります。本人の不安を解消するためにも、弁護士のサポートは不可欠です。 -
(2)本人との面会
逮捕後、勾留段階になると、弁護士以外との面会が禁止される場合を除いて、本人と家族の面会が認められるようになります。慣れない環境での身柄拘束は強い不安を与えますので、家族の面会が認められている場合には、早めに本人と面会して、不安を和らげることが重要です。
警察の留置施設では、生活用品の購入をすることができますので、購入に必要となる現金を差し入れてあげるのも有効です。衣類や下着なども一緒に差し入れるとよいでしょう。警察の留置施設であれば、差し入れの方法を問い合わせると教えてくれることも多くあります。 -
(3)職場や学校への連絡
逮捕・勾留は最長で23日間の身柄拘束となり、その間、外出はおろか、電話などで外部に連絡をすることもできません。そのため、本人に代わって、勤務先や学校などに必要に応じて連絡をしなければいけません。
最悪のケースでは、解雇や退学などの処分を受ける可能性もありますので注意が必要です。 -
(4)示談金の準備
窃盗事件は、被害者に財産的な被害が生じている犯罪なので、被害賠償をすることによって、不起訴処分や、より軽い刑事処分の獲得が期待できます。示談のためには、示談金を用意する必要があります。
本人は身柄を拘束されていますから、状況に応じて、家族が示談金の準備をする必要もあるでしょう。
4、示談がまとまらなかった場合の対応とは
-
(1)時間をおいて再度交渉を行う
被疑者に対する怒りなどから被害者が感情的になり、示談に応じてくれないこともあります。しつこく示談交渉を持ちかけると、被害者感情を刺激して逆効果になる場合もあるため、慎重に判断しなければいけません。
少しでも早く示談をまとめたいと思うかもしれませんが、焦って失敗すれば元も子もありません。場合によっては、少し時間をおくことも必要です。被害者が金額面を理由に示談に応じない場合は、金額を上乗せした提示をすることも必要になります。 -
(2)示談交渉の経緯を説明することによって有利になることも
時間をおいて交渉をしたとしても、被害者の示談に応じない意向が強いという場合には、被害者との間で示談を成立させることは困難です。
しかし、被害者との間で真摯(しんし)な示談交渉を行ったという事情は、本人の反省の態度を示す点において、示談をした場合に近いともいえます。よって、示談交渉の経緯をまとめた「報告書」を提出することによって、本人に有利な事情として検察官や裁判官に考慮してもらうことで、不起訴処分やより軽い刑事処分を獲得できる可能性もあります。
5、まとめ
窃盗で逮捕された場合には、家族のサポートが必要になってきますので、まずは弁護士に相談をすることをおすすめします。
大切なご家族が刑事事件の加害者になってしまったという場合には、お早めにベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|