逮捕の必要性とは? 逮捕の理由や判断基準、逮捕後の流れを解説
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岐阜県警察が公表している犯罪統計資料によると、令和5年中の岐阜県内における刑法犯の認知件数は1万1919件で、令和4年からさらに増加し、3年ぶりに1万件を超えました。
犯罪をすると、すぐに逮捕されると思う方も多いでしょう。しかし、逮捕をするには、その必要性や理由の存在といった要件を満たさなければなりません。そのため、実際には、罪を犯したとしても常に逮捕されるわけではありません。
今回は、逮捕の要件である「逮捕の必要性」と「逮捕の理由」、逮捕後の手続きの流れなどをベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士が解説します。
1、そもそも逮捕とは?
そもそも逮捕とはどのようなものなのでしょうか。以下では、逮捕の種類について説明します。
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(1)逮捕の種類
逮捕とは、捜査機関が被疑者の身柄を拘束する処分のことをいいます。逮捕は、罪を犯した人が逃亡したり、証拠隠滅したりするのを防ぐ目的で行われます。
このような逮捕には、以下の3つの種類があります。① 通常逮捕
通常逮捕とは、裁判官により発付された逮捕状に基づいて、被疑者を逮捕することをいいます。逮捕は、逮捕状によるのが原則とされていますので、通常逮捕が逮捕の一般的な方法といえるでしょう。
② 緊急逮捕
緊急逮捕とは、一定の重大犯罪を行ったと疑うに足りる十分な理由があるときに、逮捕状なしで被疑者を逮捕することをいいます。緊急逮捕の対象となる犯罪は、死刑または無期もしくは長期3年以上の拘禁刑にあたる罪になります。
現行犯逮捕と同様に、無令状で逮捕をすることができますが、急速を要し、裁判官に逮捕状を求めることができないことが要件となり、逮捕後に裁判官から逮捕状の発付を受けなければなりません。
③ 現行犯逮捕
現行犯逮捕とは、現に罪を行いまたは現に罪を行い終わった被疑者を逮捕状なしで逮捕することをいいます。
被疑者の逮捕は、逮捕状により行うのが原則ですが、現行犯であれば、犯罪の事実および犯人が明白ですので、例外的に無令状による逮捕が認められています。 -
(2)軽微な犯罪で逮捕する際の特別な要件
逮捕の基本的な要件については2章で説明しますが、一定の軽い犯罪については、以下のいずれかの要件を満たさなければ逮捕することができません。
- 住居不定
- 捜査機関(検察官、警察官等)からの出頭の求めに応じなかった
なお、一定の軽い犯罪とは、30万円以下の罰金、拘留または科料にあたる罪をいいます。具体的な罪としては、侮辱罪、過失傷害罪、軽犯罪法違反などが挙げられます。
2、逮捕の必要性や理由とは?
被疑者を逮捕するには、「逮捕の必要性」と「逮捕の理由」という要件を満たす必要があります。以下では、それぞれの要件について説明します。
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(1)逮捕の必要性
逮捕の目的は、「被疑者の逃亡」や「罪証隠滅」を防止することにあります。そのため、これらのおそれがある場合には、逮捕の必要性が認められます。
① 逃亡のおそれ
逃亡のおそれの有無は、被疑者の年齢や境遇、犯罪の重さなどを考慮して判断されます。
以下のような事情がある場合には、逃亡のおそれがあると判断される可能性があります。- 定職ではない
- 家族がいない
- 前科前歴がある
- 犯罪の性質や内容から実刑判決の可能性が高い
- 警察からの出頭要請に応じない
② 罪証隠滅のおそれ
以下のような事情がある場合には、罪証(=犯罪の証拠)隠滅のおそれがあると判断される可能性があります。- 被害者の住所や氏名を把握している
- 犯罪の重要な証拠を所持しており、隠滅が容易である
- 共犯者が多数いて、口裏合わせの危険がある
証拠には、証拠物だけでなく、関係者の供述も含まれます。そのため、証拠物の廃棄や隠匿の可能性が低くても、事件関係者へ働き掛けて供述内容を変えさせる現実的な可能性がある場合には、罪証隠滅のおそれがあると判断されやすくなります。
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(2)逮捕の理由
逮捕の理由とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることをいいます。
逮捕の理由があるかどうかは、客観的な証拠に基づいて判断されますので、単に疑いがあるというだけでは足りません。現行犯逮捕であれば逮捕の理由は明白ですが、通常逮捕だと防犯カメラの映像の精査、被害者や目撃者の供述などから犯人を特定して、十分に嫌疑が固まった段階で逮捕に踏み切ります。
3、逮捕後の手続きと流れ
以下では、警察により逮捕された後の手続きとその流れについて説明します。
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(1)警察による取り調べ
警察に逮捕されると、身柄を拘束されて警察署に連行されます。逮捕中は、警察署内の留置施設で生活をし、必要に応じて警察の取り調べを受けることになります。
逮捕は、被疑者の身体を拘束する重大な処分であることから、法律上時間制限が設けられています。警察は、被疑者を逮捕したときから、48時間以内に身柄を解放するか、検察官に送致しなければなりません。 -
(2)検察への送致・送検
被疑者の身柄の送致を受けた、検察官は、被疑者の取り調べを行い、引き続き身柄拘束を継続するかどうかの判断を行います。
被疑者の身柄拘束を継続する場合には、送致から24時間以内に裁判所に勾留請求をしなければなりません。 -
(3)勾留
裁判官は、検察官からの勾留請求があると勾留を認めるかどうかの判断をします。勾留の要件を満たすと判断した場合、勾留決定がなされ、被疑者の身柄は、そこから原則として10日間拘束されることになります。
また、勾留には延長制度が設けられていますので、検察官から勾留延長請求があり、裁判官が勾留延長を認めるとさらに10日間の身柄拘束が続きます。逮捕時から合計すると身柄拘束期間は、最大で23日間にもなります。 -
(4)起訴・不起訴の決定
検察官は、勾留期間が満了するまでに事件を起訴するか、不起訴にするかの判断を行います。
事件が起訴されると刑事裁判により審理が行われることになりますが、不起訴となればその時点で身柄は解放され、前科が付くこともありません。 -
(5)刑事裁判
刑事裁判では、事件についての審理が行われ、有罪・無罪の判決が言い渡されます。検察官により起訴された事件は、現在の日本では99%以上の割合で有罪となるため、よほどの証拠がない限りは、無罪を争うのは難しいといえます。
なお、起訴された後も身柄拘束は継続しますが、保釈請求をして、裁判所に認められれば、一時的に身柄を解放してもらうことができます。
4、逮捕されたくない場合は弁護士に相談を
逮捕を回避するには、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
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(1)早期釈放や示談成立に向けて動いてくれる
被害者がいる犯罪であれば、被害者と示談を成立させることで逮捕のリスクを大幅に減らすことができます。しかし、被疑者本人から被害者に連絡したとしても、怒りや恐怖心から示談の協議にさえ応じてもらえない可能性があります。また、面識のない被害者だと連絡を取りたくても取れないこともあります。
弁護士は、被疑者に代わって被害者と示談交渉を行うため、被害者としても安心して交渉に臨むことができるでしょう。また、被害者の連絡先がわからないケースであっても弁護士が捜査機関を通じて被害者と連絡を取れる可能性があります。
すでに逮捕されてしまっている場合でも示談が成立すれば早期釈放が期待できますので、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。 -
(2)任意出頭に付き添ってくれて逮捕の必要性がないことを主張できる
逮捕をするには犯罪の嫌疑があるというだけでは足りず、逮捕の必要性がなければなりません。被疑者自身で自首や任意出頭をすることで、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがないことを捜査機関に示すことができるため、逮捕のリスクを下げることができます。
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(3)取り調べについてのアドバイスをもらえる
逮捕を回避できたとしても在宅事件として捜査が続けられます。捜査機関からは、必要に応じて出頭要請がありますので、基本的には要請に応じて警察署に出頭し、取り調べを受けなければなりません。
取り調べでの発言は、調書にまとめられ裁判の証拠となりますので、取り調べでの対応が重要になってきます。一度調書が作成されてしまうと、その後弁護士が介入しても、対応できない可能性があります。そのため、取調べを受ける際は、事前に弁護士に相談して、取り調べのアドバイスを受けるのがよいでしょう。
お問い合わせください。
5、まとめ
何らかの罪を犯してしまったとしても、直ちに逮捕されるとは限りません。逮捕をするには、逮捕の必要性と逮捕の理由という2つの要件がそろうことが必要です。
逮捕の必要性や理由がないことを捜査機関にアピールするには、弁護士のサポートが不可欠といえます。逮捕を回避したいのであれば早めに弁護士に相談することをおすすめします。
何らかの罪を犯してしまったという場合には、まずはベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスまでご相談ください。刑事事件の実績のある弁護士が問題解決に向けて尽力いたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています