クーリングオフは期間が過ぎたら泣き寝入りするしかない?

2022年04月26日
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クーリングオフは期間が過ぎたら泣き寝入りするしかない?

岐阜市消費者生活センターが発行する「消費者情報通信」によると、2020年度(2020年4月~2021年3月)に同センターで受け付けた消費生活相談件数は3520件で、前年度に比べて37件増えました。年齢別では、70歳以上が721件、50歳代と60歳代がいずれも462件と、中高年層からの相談が比較的多くなっています。

「クーリングオフ」を行うと、訪問販売や電話勧誘販売などで購入した商品・サービスを無条件で返品し、代金を返してもらうことができます。ただし、一定の期間制限があるので、注意が必要です。クーリングオフ期間の経過後も、特定商取引法・消費者契約法・民法に基づき、別の方法で契約の解除・取消しが認められる可能性があります。

クーリングオフの対象取引や期間、さらにクーリングオフ期間が過ぎた後に商品等を返品したい場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「消費者情報通信 2021年度(通算第7号)」(岐阜市消費者生活センター))

1、クーリングオフとは?

訪問販売や電話勧誘販売などでしつこく勧誘されて、不要な商品やサービスを購入してしまった場合、クーリングオフによって購入契約を解除できる可能性があります。以下では、特定商取引法を中心に解説します。

  1. (1)商品・サービスの購入契約を無条件でキャンセルできる制度

    クーリングオフとは、一定の商品・サービスを購入する契約の申込み又は締結後、所定期間内に、消費者が何らの理由も必要とすることなく、無条件で、契約を解除できる制度をいいます(特定商取引法第9条第1項)。

    たとえば、訪問販売や電話勧誘販売において、購入者(消費者)が営業マンの勢いやセールストークに押されて、流されるままに商品やサービスを購入してしまうケースがよくあります。

    このようなケースで、不要な商品・サービスを購入し、高額の代金を支払わされる事態から消費者を保護するため、一定期間の無条件解除・返品を認めて再考の機会を与えるのが、クーリングオフ制度の目的です。

    クーリングオフを行うと、販売業者は、購入者に対し、受け取った代金全額を、速やかに返還する義務を負います(同条第3項)。この場合において、商品の引取り又は返還に要する費用は販売業者(販売会社)等の負担となります(同条第4項)。

  2. (2)クーリングオフの対象取引と期間

    クーリングオフの対象取引とクーリングオフ期間は、以下のとおりです。

    ■ 特定商取引法に規定されているもの
    • 訪問販売(特定商取引法第3条以下)
    • 電話勧誘販売(特定商取引法第16条以下)
    • 特定継続的役務提供(特定商取引法第41条以下)
    契約書面の受領日から8日間
    • 連鎖販売取引(マルチ商法)(特定商取引法第33条以下)
    • 業務提供誘引販売取引(特定商取引法第51条以下)
    契約書面の受領日から20日間
    ■ その他の法律に規定されているもの
    • 個別信用購入あっせん
    • 宅地建物取引
    • ゴルフ会員権契約
    • 保険契約
    契約書面の受領日から8日間
    • 投資顧問契約
    契約書面の受領日から10日間
    • 現物まがい商法
    契約書面の受領日から14日間

    ※通信販売はクーリングオフの対象外

    ただし、以下のいずれかに該当する場合には、クーリングオフが認められない点に注意が必要です。

    • 商品やサービスを営業活動の一環として購入した場合
    • 自分の意思で店舗等に足を運んで購入契約を締結した場合(特定継続的役務提供・連鎖販売取引(マルチ商法)・業務提供誘引販売取引を除く)
    • 政令指定消耗品を開封、使用した場合(未使用分はクーリングオフ可能)
    • 自動車を購入した場合
    • 商品やサービスの対価が3000円未満の場合

2、クーリングオフ期間を過ぎても契約の解除・取消しができる場合

対象取引の種類に応じたクーリングオフ期間を経過すると、説明書面の不交付・内容不備等の場合を除いて、クーリングオフができなくなってしまいます。

しかし、クーリングオフ期間を経過しても、次にみるように、特定商取引法・消費者契約法・民法に基づく救済が別途認められる可能性があります

  1. (1)必要以上に大量の商品を買った場合

    普通の生活をするにあたって、通常必要とされる量を、著しく超える商品・サービスを購入することなどを「過量契約」と言います。

    (例)ひとり暮らしの高齢者が、電子レンジを10セットも購入してしまった場合

    過量契約に当たる商品・サービスの購入契約は、クーリングオフ期間が契約締結後1年間に延長されます(特定商取引法第9条の2第1項、第2項等)。

  2. (2)長期間にわたる契約をしている場合

    連鎖販売取引(マルチ商法)および特定継続的役務提供の場合、購入者はクーリングオフ期間の経過後でも、将来にわたって契約を解除することが認められています(特定商取引法第40条の2、第49条)。

    特定継続的役務提供とは、エステ・語学教育・学習塾等・家庭教師等・パソコン教室等・結婚相談所などのサービスを提供する取引のことです。

    ただし、クーリングオフ期間経過後の解除の場合、契約締結時から解除時までに発生する費用(料金)は負担する必要があるほか、一定の違約金を請求されることもあるので注意が必要です。

  3. (3)消費者契約法に基づく取消しが認められる場合

    販売業者等に以下の行為が認められる場合には、購入者(事業者でない個人に限る)は、商品・サービスの購入契約を取り消すことができます。

    • ① 重要事項の不実告知(消費者契約法第4条1項第1号)
    • ② 不確実な事項に関する、断定的判断の提供(同項第2号)
    • ③ 不利益事実の不告知(同条第2項)
    • ④ 消費者の要求に反する不退去(同条第3項第1号)
    • ⑤ 退去しようとする消費者の妨害(同項第2号)
    • ⑥ 消費者にとって退去が困難な場所における勧誘(同項第3号)
    • ⑦ 第三者に連絡しようとする消費者の妨害(同項第4号)
    • ⑧ 消費者の不安をあおる告知(同項第5号)
    • ⑨ デート商法(同項第6号)
    • ⑩ 判断力の低下の不当な利用(同項第7号)
    • ⑪ 霊感商法(同項第8号)
    • ⑫ 契約締結前にサービスを提供する行為(同項第9号及び10号)
    • ⑬ 過量契約(同条第4項)


    過量契約については、特定商取引法に基づき1年間のクーリングオフが認められていますが、期間経過後でも、上記の消費者契約法の規定に基づく契約取消しが可能です。

    なお、消費者契約法に基づく契約取消しの意思表示は、追認ができる時(取消しの原因となる状況が消滅し、かつ、取消しできることを知った時点)から1年以内、かつ契約締結時から5年以内に行う必要があります(消費者契約法第7条第1項)。

  4. (4)錯誤・詐欺取消しが認められる場合

    以下の要件を満たす場合には、民法上の錯誤・詐欺に基づき、契約を取り消すことができます(民法第95条、第96条第1項)。

    <錯誤取消し(民法第95条)の要件>(※「」内は民法95条を抜粋)
    • ① 以下のいずれかに該当すること
      ・意思表示に対応する意思を欠いていたこと
      ・意思表示の基礎とした事情(ただし、「その事情が法律行為の基礎とされていること」につき、表示されている場合に限る)についての認識が真実に反していたこと
    • ② ①錯誤の内容が、「法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものである」こと
    • ③ ただし、「錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には」、次の場合を除いて、錯誤による取消しを主張することができません。
      ・「相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき」
      ・「相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき」
    • ④ なお、錯誤による取消しは、善意無過失の第三者に対抗することができない点に注意が必要です。


    <詐欺取消し(民法第96条)の要件>
    • ① 詐欺をした者に二重の故意(相手方を欺こうとする意思と、欺くことによって一定の意思を表示させようとする意思)があること
    • ② 詐欺者によるが存在すること
    • ③ 詐欺者の欺罔行為により、購入者が錯誤に陥り、その錯誤に基づき、詐欺者が欲した商品・サービスを購入したこと
    • ④ 詐欺者による詐欺が違法性のあるものであること

3、弁護士以外の消費者トラブル相談先

消費者トラブルの被害に遭った場合の弁護士以外の相談先として、消費生活センター・消費者ホットラインがあります。

● 消費生活センター
独立行政法人国民生活センターは、全国各地に消費生活センターを設置し、消費者被害に関する相談を受け付けています。岐阜県にも多くの相談窓口が開設されていますので、お住まいの市区町村に確認してみましょう。

● 消費者ホットライン
消費者庁は、消費者被害などの相談用に「消費者ホットライン」を開設しています。

消費者ホットラインに電話をすると、平日は原則として、最寄りの消費生活センターへつながります。
また土日祝日でも、国民生活センターによる相談対応を利用できる点が、消費者ホットラインの大きな特徴です。

4、弁護士に消費者トラブルを相談するメリット

消費生活センターや消費者ホットラインへの相談では、消費者被害への対応に関する一般的なアドバイスにとどまるため、被害回復に向けた具体的なサポートを必要とする場合には、弁護士に相談することがおすすめです。弁護士に依頼すれば、契約解除、商品の返品及び代金返還請求を、購入者の代理人として進めてもらえます

5、まとめ

クーリングオフによる契約の解除は、書面不備等一定の場合を除いて、クーリングオフ期間内に行う必要があります。
この場合であっても、特定商取引法・消費者契約法・民法等に定められる要件を満たすときは、購入契約の解除・取消しが認められる場合があります。

お悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています