転勤を理由に離婚できる? 離婚の流れや弁護士に相談するメリット
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勤務先や勤務形態によっては、定期的に転勤を命じられることがあります。特に、大企業では3年に一度くらいの頻度で転勤をしなければならないこともあり、それに付き合っていく家族の負担は非常に大きいと言えるでしょう。
子どものいる家庭では、子どもが転校することで学校生活を楽しめなくなってしまうことも考えられます。このような家族全員への負担を踏まえて、転勤族の配偶者との離婚を考える方もいるかもしれません。
しかし、配偶者の転勤を理由に離婚するには、確認しておきたいことがいくつかあります。離婚時に配偶者から不利な条件を押し付けられる可能性もあるため、離婚を切り出す前に適切な準備を行いましょう。
今回は、転勤を理由に配偶者と離婚する方法や、弁護士に相談するメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士が解説します。


1、配偶者が転勤族であることを理由に離婚できる?
配偶者が転勤族であることを理由に、離婚したいとお考えの方もいるでしょう。以下では、転勤が多い配偶者と離婚したくなる理由や、実際に離婚はできるのかどうかご紹介します。
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(1)転勤が多い配偶者と離婚したい理由
転勤族の家族にはさまざまな負担が生じるため、転勤のない生活を求めて離婚を考えることもあるかもしれません。転勤が多い配偶者と離婚をしたいと考える、よくある理由を紹介します。
① 友人や住み慣れた場所から離れることで不安や孤独を感じる
転勤により住み慣れた場所から離れると、生活環境が大きく変わります。また、親や友人と会いにくくなってしまうと、不安や孤独を感じるのは当然のことでしょう。
配偶者には、転勤先の職場という居場所があるかもしれませんが、家族には周囲に頼れる人がいないケースがほとんどです。配偶者の転勤のたびに、そのような不安な生活を感じていれば、離婚を考えるきっかけになってしまうでしょう。
② 自分の仕事に影響が出る
共働き夫婦の場合、配偶者の転勤に伴って仕事を辞めなければならないこともあります。その際、仕事への影響を理由に離婚を検討する方もいるでしょう。
自分の意思ではないのに、仕事を辞めざるを得ない状況が何度も続けば、仕事へのモチベーションが下がるだけではなく、今後のキャリアに影響が出るおそれもあります。
自分の目指すキャリアを踏まえて、離婚を考えることは珍しいことではないと言えるでしょう。
③ 引っ越しによる金銭的な負担が大きい
頻繁に転勤がある会社では、引っ越しにかかる金銭的な負担が大きいことも離婚の理由のひとつとなります。
引っ越しをするには、引っ越し業者に支払う費用だけではなく、新居用の家具・家電の購入費用、新居の初期費用、不用品の処分費用などが少しずつ家計を圧迫することになるでしょう。
④ 子どもの転校が心配になる
子どもがいる場合は、転勤に伴って子どもは転校しなければなりません。
転校をすることで、仲のよい友達と離れることによるストレスや、新しい学校生活への不安から心身に影響が生じ、子どもが不登校になってしまうおそれがあります。
そのため、子どものストレスを最小限に抑えるために、転勤族の配偶者との離婚を考える方もいるでしょう。 -
(2)転勤が多い配偶者と離婚する方法
転勤が多い配偶者との離婚を決断したら、まずは話し合いで離婚成立を目指していきましょう。配偶者が転勤による妻や子どもの負担を理解し、離婚に応じてくれるようであれば、協議離婚により離婚をすることが可能です。
一方、転勤族の配偶者が離婚に応じてくれない場合、最終的には離婚訴訟による離婚成立を目指していくことになります。ただし、以下のいずれかの法定離婚事由に該当しなければ、離婚は認められません。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
上記の離婚事由を照らし合わせると、配偶者の転勤は、直接的にはいずれにも該当しません。しかし、配偶者の転勤をきっかけに婚姻関係が破綻しているようであれば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性があります。
なお、夫婦間での話合い自体が難しい場合は、その時点で弁護士に間に入ってもらって離婚条件の交渉を進める方がよいでしょう。
2、離婚を切り出す前に準備しておくべきこと
早く離婚をしたい気持ちから、何も準備をせずに配偶者へ離婚を切り出すと、不利な離婚条件を受けてしまったり、ケンカになってしまったりするおそれがあります。離婚を切り出す前に、まずは以下の準備をしておくようにしましょう。
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(1)離婚を切り出す場所やタイミング
離婚を切り出すのは、お互いが落ち着いて話し合えるタイミングにするべきです。
特に、子どもがいる家庭では、子どもが離婚の話を聞いて不安にならないよう、夫婦だけのタイミングを狙って離婚を切り出すようにしましょう。
また、離婚は非常にデリケートな話題です。周囲に人がいる状況では、落ち着いて話ができない可能性があります。そのため、自宅など周りの目が気にならない場所で話をするようにしましょう。 -
(2)不貞行為やDV、モラハラなどの証拠集め
転勤以外にも、配偶者の不貞行為やDV、モラハラなどで悩んでいる方もいるでしょう。
それらの理由は法定離婚事由に該当し、離婚や慰謝料の請求ができる可能性があります。
ただし、不貞行為やDV、モラハラなどを理由に離婚をするには、それらを立証するための証拠が欠かせません。先に離婚を切り出してから証拠を収集しようとすると、配偶者に証拠を隠蔽されるおそれもあるため、十分な証拠を確保してから離婚を切り出すようにしてください。 -
(3)財産分与のための財産調査
婚姻期間中に夫婦で協力して築いた共有財産は、離婚時の財産分与の対象になります。
適正な財産分与を行うには、共有財産を正確に把握することが重要になるため、離婚を切り出す前に相手の財産を調査しておきましょう。
離婚を切り出してからでは、素直に応じてくれないケースがあるため、不当な財産隠しを防ぐためにも事前の調査が重要です。 -
(4)離婚後の生活拠点や生計の確保
転勤族の配偶者と離婚し、妻が自宅を出ていくケースでは、離婚後の生活拠点を確保しなければなりません。
また、配偶者の収入で生活していた方は、子がいて自分が親権者になる場合は養育費が貰えるとはいえ、離婚後は自分で生活費を稼ぐ必要があるため、新しい仕事を探すことになります。
新居や仕事はすぐには見つからないこともあるため、早めに行動するようにしましょう。
お問い合わせください。
3、転勤を理由とした離婚を拒否されたときの対処法
転勤を理由に離婚を切り出すと、配偶者に「チャンスをくれ」「転勤は自分のせいではない」と言われて離婚を拒否されてしまうこともあるでしょう。その場合の対処法を紹介します。
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(1)弁護士への相談
離婚するにあたっては、そのタイミング、証拠収集、財産調査、生計の確保等を考える必要があります。また、その結果に基づいて、離婚条件を提案する必要があります。
さらに、離婚調停や離婚訴訟の手続きをする場合、自分で主張を考えたり、書面を作成したりする必要があります。
このようなことをお一人で考え、対応することは困難ですし、心理的にも大きな負担になりますから、一度弁護士にご相談いただくことをお勧めします。 -
(2)夫婦の話し合いがまとまらないときは離婚調停の申し立て
夫婦の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。
調停では、裁判所の調停委員が夫婦の間に入って話し合いを進めてくれるため、夫婦だけよりもスムーズに離婚の話し合いが進むでしょう。
また、調停では夫婦が直接顔を合わせて話し合うことはありません。そのため、調停委員に対して、転勤による生活が苦痛だったこと話し、配偶者に伝えてもらうようにしましょう。
ただし、調停委員は中立の立場ですから、ご自身に有利に主張を展開したい場合は、調停の時点で弁護士を立てることをお勧めします。
もっとも、調停はあくまでも話し合いの手続きであるため、配偶者が離婚に同意してくれない限りは、離婚調停で離婚することはできません。
なお、法律上、離婚調停をせずにいきなり離婚訴訟を提起することは認められていません。 -
(3)離婚調停が不成立になったときは離婚訴訟を検討
離婚調停が不成立になったら、最終的に家庭裁判所に離婚訴訟を提起して、裁判離婚を目指すことになります。
もっとも、先述のとおり、裁判離婚をするには法定離婚事由が必要です。そのため、転勤生活がつらいというだけでは、裁判で離婚を認めてもらうのは難しいでしょう。
法定離婚事由に該当するような事情がないときは、しばらくの間別居するのも有効な手段です。別居が長期間に及べば、夫婦関係が破綻している事情のひとつとなり、「その他の婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性があります。
また、配偶者の給料で生活している方は、婚姻したままでの別居中であれば、配偶者に対して婚姻費用という生活費を請求できるため、忘れずに請求するようにしましょう。
4、転勤族の配偶者との離婚を弁護士に相談するメリット
転勤族の配偶者との離婚をお考えの方は、弁護士に相談するのがおすすめです。主なメリットを4つ紹介します。
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(1)転勤が法的な離婚理由に該当するかどうか判断してもらえる
配偶者の転勤が多いという理由だけでは、裁判離婚をするために必要な法定離婚事由には該当しません。
しかし、配偶者の転勤をきっかけに夫婦関係が破綻している事情があれば、裁判離婚が認められる可能性があります。また、転勤以外の理由で離婚原因として主張可能なものがあるかもしれません。
法定離婚事由に該当するかどうかは、法的観点からの検討が必要になります。ご自身のケースで裁判離婚できる可能性があるかどうかを判断してもらうためには、まずは弁護士に相談するようにしましょう。 -
(2)配偶者との交渉や法的手続きを任せられる
離婚をするには、交渉や調停、裁判などの手続きが必要になります。
交渉だけであれば、自分ひとりでも対応できると思うかもしれませんが、養育費、財産分与、年金分割といったことはしっかりと取り決めをしておかなければ、損になりますし、後から思わぬトラブルを招きかねません。
そして、調停や裁判などの法的手続きが必要な事案では、法的知識や経験がない一般の方だけでは対応が難しいといえるでしょう。
また、調停委員や裁判官は間に入ってくれますが、どちらかの味方をするわけではありません。そのため、弁護士を付けない場合、ひとりで、離婚に関する主張や手続きの進め方を考え、主張書面や証拠を提出する必要があります。
弁護士に依頼すれば、交渉や調停、裁判などの手続きをすべて任せることができるため、負担を大幅に軽減することが可能です。 -
(3)弁護士が間に入ることで、無用な争いや感情的な衝突を避けられる
当事者同士の話し合いでは、どうしても感情的な衝突が生じてしまい、言い争いが避けられません。
しかし、弁護士に依頼すれば、弁護士が代わりに配偶者と交渉できるため、無用な争いや感情的な衝突を避けて冷静に話し合いを進められます。そのため、当事者同士の話し合いよりもスムーズに離婚の成立を目指せるでしょう。
特にDVがあり得るようなケースや、配偶者からモラハラを受けている場合などは、身体と心の安全のためにも、弁護士を入れて交渉することをお勧めいたします。 -
(4)別居するにあたっても婚姻費用請求などを交渉してもらえる
転勤だけでは法定離婚事由に該当する事情に乏しく、配偶者が離婚に同意してくれなければ裁判離婚が難しいケースも少なくありません。
そのようなときは、別居をして別居期間を稼ぐのも有効な手段です。弁護士に依頼すれば、別居中の婚姻費用などの交渉も任せることができるため、相場を踏まえた適正な金額を請求することが可能です。
5、まとめ
転勤が多い配偶者と離婚したい理由には、「住み慣れた場所から離れることで不安や孤独を感じる」「子どもへの影響が大きい」などがあります。
このような理由で離婚したい場合、直接的な離婚原因にはなりません。しかし、転勤がきっかけで婚姻関係が破綻していると判断された場合には、法的な離婚理由に該当する可能性があります。
弁護士であれば、転勤を理由に離婚できるかを法的に判断ができ、離婚をスムーズに進めるためのアドバイスも提供可能です。転勤を理由に離婚をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスまでお気軽にご相談ください。
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