離婚調停前に別居したい! 早期かつ安全に別居する方法とは

2022年09月22日
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離婚調停前に別居したい! 早期かつ安全に別居する方法とは

岐阜市が公表している人口動態に関する統計資料によると、令和2年の岐阜市内の離婚件数は、965件でした。前年と比較すると50件の減少となっていますが、毎年1000件前後の離婚件数があることがわかります。

離婚の話し合いをしているものの、離婚するかどうかや離婚条件などで合意が得られず、話し合いが進まないという方も少なくありません。そのような場合には、家庭裁判所の離婚調停という手続きを利用することになります。離婚調停で争う状態になると、同じ空間で生活することが難しくなり、離婚調停前に別居をすることもあります。離婚調停前に別居をすることによって、今後の調停や離婚にあたって不利になることはあるのでしょうか。

今回は、離婚調停前の別居による離婚調停への影響と、別居後の離婚手続きを、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士が解説します。

(出典:令和2年版 岐阜市統計書)

1、離婚前に別居すると離婚調停で不利になる?

離婚前に別居をしたことが離婚調停で不利になることがあるのでしょうか。以下では、夫婦の同居義務と離婚前の別居の関係について説明します。

  1. (1)夫婦の同居義務とは

    夫婦の基本的な義務として、民法では同居義務が規定されています(民法752条)。夫婦の同居義務とは、その言葉のとおり、同じ住居に居住して一緒に生活をする義務のことをいいます。

    そのため、正当な理由なく同居を拒んだ場合には、この同居義務違反になりますので、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

    ① 離婚請求をされる
    民法では、当事者間に離婚合意が成立していない場合であっても法定の離婚事由に該当する事情がある場合には、裁判所が離婚を命じることができるとしています。

    法定離婚事由のなかには、「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)というものがあります。「悪意の遺棄」には、物理的な方法のほか、必要な経済的支援をしないという方法も含まれます
    そのため、離婚調停前に正当な理由なく別居をしたうえ、長期間生活費を渡さないという状態が続けば悪意の遺棄と判断され、相手からの離婚請求が認められる可能性があります。

    ② 慰謝料を請求される
    悪意の遺棄に該当する場合には、正当な理由なく別居をした配偶者には、婚姻関係を破綻させる原因を作ったという点で違法性が認められます。そのため、離婚にあたって、相手から慰謝料請求をされる可能性があります。
  2. (2)同居義務に違反している可能性がある例

    夫婦の同居義務違反になる可能性がある例としては、以下が挙げられます。

    ① 夫婦関係が悪化していないのに、一方的に家を出る
    夫婦関係が悪化していないにもかかわらず、一方的に家を出るのは、典型的な同居義務違反となります。実家のほうが居心地がよいなどの理由で実家に入りびたり、夫婦の自宅に戻らないのも同居義務違反となります。

    ② 別居後、生活費を渡さない
    上記のような理由で別居をした後、配偶者に対して生活費を渡さないと、同居義務違反に加えて悪意の遺棄と認定される可能性があります。別居した夫婦は、離婚が成立するまでは互いに扶養する義務がありますので、収入の多い方から少ない方に対して一定の生活費を渡す必要があります
    このような義務を怠ると、悪意の遺棄として慰謝料を請求される可能性があります。

    ③ 相手を家から追い出して、帰宅させない
    自分が出ていくということだけでなく、相手が自宅に帰ってくるのを拒んでも、同居義務違反となりえます。相手と生活するのが嫌だからという理由で、自宅のカギを交換して帰宅を困難にしたような場合には、自宅を追い出した側が同居義務違反になる可能性があります。

2、離婚調停で不利にならない別居方法とは

上記のとおり、離婚調停前に別居をすると場合によっては同居義務違反となり、離婚調停で不利な扱いを受ける可能性があります。そのため、離婚調停前に別居をする場合には、以下のような方法によるのが安全です。

  1. (1)別居することの合意を得る

    同居義務違反となるのは、正当な理由のない同居義務違反に限られます。当事者間で合意をしたうえで別居をするというケースでは、同居義務違反とはなりません

    可能であれば、別居する前にはきちんと相手と話し合いをしておくことが大切です。

  2. (2)すでに婚姻関係が破綻している状態での別居

    夫婦間で会話がなく家庭内別居状態であるなど、別居をする時点においてすでに婚姻関係が破綻しているという場合には、夫婦に同居を強制することが困難な状態であるといえます。そのため、このような場合には、離婚調停前に別居をしたとしても直ちに同居義務違反にはならないと考えられます。

  3. (3)DVやモラハラを理由に行う別居

    配偶者からDVやモラハラを受けているという場合には、そのままの状態で同居を継続すると生命や身体又は精神に危険が及ぶ可能性があります。配偶者からのDVやモラハラを回避するために行う別居については、正当な理由のある別居といえますので、同居義務違反になることはありません

    DVやモラハラは、これをした配偶者から否認されることも多いので、DVやモラハラによる別居をする場合には、証拠を残しておくようにしましょう。

3、別居後の離婚手続き

別居後の離婚手続きの一般的な流れは、以下のとおりです。

  1. (1)協議離婚

    離婚をする場合には、まずは、夫婦間で離婚をするかどうか、離婚をする場合の条件(親権、養育費、慰謝料、財産分与、面会交流など)について話し合いを行います。別居をしている場合には、毎日顔を合わせることはありませんので、電話やメールを通じた連絡や、改めてどこかで会って話し合いをすることになります

    協議の結果、合意に至れば、離婚届を提出して離婚成立となります。合意した内容については、後日争いにならないよう離婚協議書または公正証書にして残しておくのが望ましいでしょう。

  2. (2)調停離婚

    夫婦の話し合いでは、離婚や離婚条件について合意に至らなかった場合やそもそも話し合い自体困難であるという場合には、家庭裁判所に対して離婚調停の申し立てを行います。

    離婚調停も基本的には協議離婚と同様に話し合いの手続きになりますが、家庭裁判所の調停委員が間に入って、話し合いを進めてくれます。当事者同士でうまく話が進まない売でも、調停委員が入ることで、話が進むこともあります。調停期日では、申立人と相手方で別々の待合室が準備され、調停委員のいる部屋に申立人と相手方が交互に入って話をするなど、当事者同士が直接顔を合わせないように配慮がされています。

    離婚調停では、裁判離婚とは異なり、法定離婚事由がなくても、双方の合意により離婚をすることが可能です。離婚調停を成立させるためには、希望する条件に優先順位を付けるなどして、譲歩できる部分は譲歩していくことも大切です。

    離婚調停が成立した場合には、合意したその内容が調停調書に記載され、当事者双方に交付されます。調停離婚の場合にも離婚届の提出が必要になりますので、調停成立後に忘れずに行うようにしましょう。

  3. (3)裁判離婚

    離婚の合意が得られない場合には、離婚調停は不成立となります。さらに離婚を求める場合には、家庭裁判所に離婚裁判を起こす必要があります。

    裁判離婚は、協議離婚や調停離婚のような話し合いの手続きではなく、訴訟手続に従い、法定離婚事由に該当するかどうかが争われます。原告は、法定の離婚事由に該当することを証拠に基づいて主張立証していく必要があります

    裁判官は、原告と被告の主張立証を踏まえて、最終的に判決によって離婚を認めるかどうかや離婚条件について判断をします。

4、離婚の相談なら弁護士へ

離婚についてお悩みの方は、ひとりで悩むのではなく弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)離婚後の生活に必要な離婚給付

    離婚を考える方の多くが、離婚後の生活に不安を抱いています。経済的に不安な状態では、離婚をしたいと思ってもなかなか積極的に離婚を進めることができません。

    実際には、離婚によって得られる金銭給付(養育費、慰謝料、財産分与)があれば、離婚後の経済的な見通しを立てることが可能になることもあります。

    弁護士は、どのようなお金を請求できるのか、状況をお伺いし、アドバイスすることが可能です。

  2. (2)相手との対応を任せることができる

    裁判離婚の前に調停離婚が前置されている今の離婚制度においては、相手との話し合いを避けて通ることはできません。相手と顔を合わせて話し合いをすることに苦痛を感じる方もいます。また、当事者同士の話し合いでは感情的になってしまい、スムーズな話し合いを進めることが困難な場合もあるでしょう。

    このような場合には、弁護士に依頼をすることによって、相手との窓口になってもらうことができます。必要に応じて、離婚調停の申し立て、離婚調停期日への同行、離婚裁判の提起なども任せることができますので、本人の負担は大幅に軽減されます。

  3. (3)有利な離婚条件を獲得することができる可能性が高まる

    離婚にあたっては、親権、養育費、慰謝料、財産分与、面会交流などの条件を定める必要があります。これらの条件の交渉には、知識と経験が欠かせません。少しでも有利な条件を獲得するためには、弁護士に依頼するのがおすすめです。

    弁護士への依頼をしないと、養育費や慰謝料の相場から乖離した不当に低い条件で離婚をしてしまったり、財産分与対象財産の選定や評価を誤った不利な条件で合意したりすることにもなりかねません(実際に相談に応じていると、思いのほか、そのような事案に出くわすことがあります。)。

5、まとめ

正当な理由のない一方的な別居は、同居義務違反となるおそれがあります。別居をする際には、それが正当な理由に基づくか否かについて、考えてみることが必要です。また、一度別居を実行してしまうと、自宅内に置いてある必要な物を取りに行くことが難しくなります。別居前には、入念な準備が必要です。

別居や離婚に関してお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスまでお気軽にご相談ください。

岐阜オフィスの弁護士がご相談をお伺いし、状況によっては離婚チームの弁護士と連携しながら、納得のいく結果になるよう全力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています