離婚時に無職だと親権は取れない? 親権を取るためのポイント
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岐阜県の公表している「岐阜県統計書(令和5年)」によると、令和4年に岐阜県では2,565組の夫婦の離婚が成立したそうです。
子どもがいる夫婦が離婚する場合、親権でもめるケースは少なくありません。そのなかには無職であることから親権を獲得できるのか不安に思われている方もいるでしょう。
そこで、離婚時に無職の場合でも親権が獲得できるのかについて、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士が解説します。


1、離婚時に無職の場合は親権を取れない?
離婚時に無職だった場合は親権を取ることが難しいのでしょうか?
無職でも親権を取れるのか、そしてそもそも親権とは何かについて解説します。
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(1)無職でも親権者になれる?
結論から説明すると、専業主婦(主夫)や離職中で離婚時に収入がない場合でも、離婚相手に養育費を請求したり、祖父母から生活費の援助を受けたり、行政から各種の支援を受けるなどして、離婚後の子どもの利益(福祉)を損なわないだけの家計を保てる見込みがあれば、親権者になることができます。
そのため、親権者を決めるに当たっては、年収や経済状況よりも、これまでどの程度育児に携わってきたかや、子どもとの親和性の方がより重視されます。 -
(2)親権者の権利とは
「親権」とは、未成年の子どもの利益のために、子の財産管理や監護・教育する権利義務のことです。婚姻中は夫婦共に親権を持ちますが、現在の日本法では離婚をする場合は、父母のどちらかを親権者に定めなければなりません(ただし、民法改正により、2026年5月24日までには共同親権の制度が開始されます。もっとも、制度の開始後も共同親権になる場合と、単独親権となる場合とがあります)。
親権には、「財産管理権」と「身上監護権」という2種類の権利義務が含まれています。原則、親権者は2種類の権利義務どちらも持ちますが、「身上監護権」については親権者ではない親(監護権者)と分けることも可能です。ただし、実務上はこの2種類の権利義務を分ける例はほとんどありません。
2種類の権利義務の内容について詳しくみていきましょう。・財産管理権
「財産管理権」は、未成年の子どもの財産を管理し、子どもの法律行為に同意したり法律行為を代理したりする権利義務です。
法律上、未成年者は親権者の同意を得なければ契約などの法律行為はできません。そのため、親権者は子どもの法律行為に対する同意権や代理権を持ちます。たとえば、子どもが親権者の同意を得ずに高額な商品を購入してしまった場合、その売買契約を取り消すことができます。
・身上監護権
「身上監護権」は未成年の子どもを心身共に健全に成長させるために監護・教育する権利義務のことです。前述のとおり、「身上監護権」は親権者と分離することも可能で、この権利を行使する者を「監護権者」といいます。
身上監護権には4つの権利義務が含まれています。
- ① 子の人格の尊重義務(民法821条)
- ② 居所指定権(民法822条)
- ③ 職業許可権(民法823条)
- ④ 身分行為の代理権
なお、親権者と監護権者を分けた場合、子どもと一緒に暮らすことができるのは「監護権者」です。
2、無職で離婚した際に親権を取るためのポイント
無職の方が親権を取るために、おさえておきたいポイントをみていきましょう。
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(1)離婚前に別居する際は子どもを連れていく
離婚に至るくらいですので、配偶者と不仲のあまり、急に家を飛び出したくなることもあるでしょう。しかし、DVなどのやむを得ない理由もないのに、子を置いて出ていくと親権の判断にあたっては不利に働くことがあり得ます。
反対に、別居後に子供と一緒に生活し、別居期間中に子どもを安定して養育できていれば、親権争いで裁判になったときに、その実績を評価してもらえます。裁判官に有利な判断をしてもらうためにも、離婚前に別居する場合は子どもを置いていかないようにしましょう。
配偶者と建設的な協議が可能な状態であれば、別居に当たって子を連れて行くということに同意を得ておくと、後々のトラブルを防げるでしょう。
また、子どもを連れて行くということは、生活環境を変えることになりますので、子どもが十分に大きい場合には、しっかりと子どもの理解を得てから連れていきましょう。場合によりますが、転校が必要ない地域内で別居するなど、子の環境の変化が少なくなるような配慮も重要です。
もっとも、配偶者からのDVなどがある場合など、劣悪な家庭環境からの早期避難を優先すべき場合もありますから、全ての件で子どもを連れて別居することについて事前協議が必須というわけではありません。 -
(2)子どもの利益につながるかどうか
親権者を決める場合にもっとも重要なポイントは、「子どもの利益」につながるかどうかです。
食事管理ができるか、清潔な環境で過ごせるように掃除洗濯ができるか、経済力はあるか、母親の健康状態や人間性などに問題がないかなど、さまざまな事情を鑑みて、父母どちらを親権者にした方が「子どもの利益」につながるかを裁判では判断されます。
無職であることは親権を取れない決定的な要因にはなりません。経済力はもちろん判断材料のひとつではありますが、裁判ではさまざまな事情を総合的に見て、判断されます。
3、離婚した際に親権が取れないケース
「子どもの利益」にならないと判断されるケースでは親権を取ることができません。親権が取れないと判断される代表的なケースをいくつか紹介します。
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(1)子どもに対して暴力を振るっている
子どもの健全な成長に悪影響を及ぼすような暴力行為をしている親に親権が渡るのは、子どもにとって不利益にしかなりません。
また、育児放棄(ネグレクト)をしている場合も同様に親権は認められません。 -
(2)犯罪の常習性がある
万引きや薬物使用といった犯罪を繰り返し行っていた場合は、今後も再犯する可能性があります。そのため、犯罪の常習性があるケースでは、親権者には不適格と判断される可能性が高いでしょう。
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(3)病気の症状が重い、服役中である
病気の症状が重いケースや服役中のケースでは、環境的に子どもを育てることは難しいと判断されます。
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(4)借金癖やギャンブルへの依存がある
借金癖があり借金を繰り返している場合やギャンブル依存症が疑われるような場合は、養育費を適切に管理できないと判断され、親権を獲得できない可能性が高くなります。
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(5)育児を配偶者に任せきりにしていた
育児を配偶者に任せきりにし、自分は家事育児を何もしていなかったという場合も、配偶者が上記のいずれかに当てはまるような例外的な場合でない限り、親権を獲得することは難しいでしょう。
4、親権でもめた場合の法的手続き
親権を含め、離婚の際に「協議」が決裂した場合や協議を行うこと自体が難しい場合には、「調停」「裁判」という手続きを経て解決を目指します。
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(1)協議
まずは夫婦で話し合いを行い、離婚をすることや条件、親権者を決めていきます(離婚協議)。
この時点で親権者が決まり、その他の離婚条件(養育費や財産分与など)についても合意すれば、その内容を書面にして話し合いは終了します。離婚届を提出すれば、離婚は成立です。
なお、養育費などの金銭条件が含まれる場合は、書面を「公正証書」にしておくことを特におすすめします。公正証書とは、公証役場で公証人に作成してもらう公文書のことです。
公正証書に強制執行認諾文言を付けておくことで、たとえば養育費が滞った場合に、裁判を行わずに強制執行ができるというメリットがあります。そのため、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておくと安心です。 -
(2)調停
協議が決裂してしまった場合は、「調停」という裁判所の手続きに進みます。調停とは、裁判官や調停委員の仲介のもと、話し合いで紛争を解決する制度です。
調停では、調停委員からのアドバイスを受けつつ話し合いを進めていきますが、どちらの親が親権者にふさわしいのかを判断するために「調査官調査」が行われることがあります。
「調査官調査」とは、家庭裁判所の調査官によって行われる調査です。
主な調査方法は「家庭訪問」や「子どもとの面談」、「幼稚園や学校の訪問」、「家庭裁判所の面接室での様子観察」です。調査結果は原則書面で裁判所に報告され、それをもとに話し合いを行います。
離婚調停で合意に至ると「調停離婚」が成立しますが、合意に至らなかった場合は「裁判」手続きに移行します。なお、調停前置主義といって、離婚裁判を提起するためには、必ず調停を経る必要があります。 -
(3)裁判
離婚調停不成立の場合は、「離婚裁判(訴訟)」を提起します。
離婚裁判では話し合いは行われません。当事者の主張や提出された資料、調査官調査の結果などをもとに、親権者をどちらにするか裁判官が判断を下します。
判決が確定すると、当事者は確定判決に従わなければなりません。
5、親権に関するトラブルは弁護士に相談を
親権についてもめている場合は、早めに弁護士へ相談しましょう。
弁護士は、配偶者との交渉を代理で対応することが可能です。揉めている二人で直接話す必要がなくなるだけでも、精神的なストレスは大幅に減るでしょう。
また、親権獲得はもちろんのこと、離婚条件についての法的なアドバイスを受けられるので、落ち着いて交渉を進めることができます。結果として、調停や裁判になる前に合意できる可能性も高まります。
もし、調停や裁判に発展してしまった場合も解決するまでサポートしてもらえます。裁判手続きにおいては、準備や対応などの負担が大きくなりますが、弁護士に依頼していれば、それらを一任することもできるので安心です。
お問い合わせください。
6、まとめ
離婚時点で無職であったとしても、それだけを理由に親権を獲得できないわけではありません。もっとも重視されるのは「子どもの利益」です。そのため、無職だからとあきらめることなく、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
親権争いを有利に進めるためにも、親権に関するトラブルでお困りの場合は、ぜひベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士までご相談ください。経験豊富な弁護士が、しっかりとお話を伺ったうえで解決までサポートします。お気軽にお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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