スピード離婚でも慰謝料を請求できる? 請求の流れや考えるべきこと
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岐阜市が公表している統計資料によると、2021年の岐阜市の離婚率は1.42でした。岐阜県の離婚率の1.30を上回っており、県内でも比較的離婚率の高い地域であることがわかります。
結婚するときは「この人とずっと一緒にいる」と思っていたとしても、期待と現実とのギャップが大きい場合、結婚してから1~3年程度で離婚に至るケースもあるでしょう。このようなスピード離婚では、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。また、慰謝料を請求する場合、どのような流れで行えばよいのでしょうか。
今回は、スピード離婚で慰謝料を請求できるか、慰謝料請求をする流れなどについて、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士が解説します。
1、スピード離婚でも慰謝料請求できる? 請求できるケースとは
スピード離婚とは、明確な定義があるわけではありませんが、一般には結婚後3年以内に離婚してしまうことを指す傾向があります。このようなスピード離婚の場合、慰謝料請求をすることができるのでしょうか。
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(1)スピード離婚でも慰謝料請求は可能
離婚にあたって慰謝料を請求できるかどうかは、夫又は妻の一方が婚姻関係の破綻原因を作ったかどうかがポイントになります。そのため、以下のような破綻原因を作った責任(有責性)が専ら相手方にあると認められれば、スピード離婚であっても慰謝料請求をすることは可能です。
① 不貞行為
不貞行為とは、配偶者以外の異性と性行為を行うことをいいます。性行為があったことがポイントになりますので、二人きりでデートした、手をつないでいた、キスをしたという事実だけでは、通常は不貞行為とはいえません。
② 悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦の基本的な義務である、同居・扶助・協力義務を履行しないことをいいます。
具体的には、以下のような行為が、悪意の遺棄に該当する可能性が高いでしょう。- 正当な理由なく、配偶者や子供を放置して、自宅を出て別居した
- 収入がありながら、生活費を全く渡さない
③ DV・モラハラ
配偶者から暴力やモラハラを受けている場合には、慰謝料請求が可能です。
DV・モラハラを原因として慰謝料請求する場合は証拠の有無が重要になりますので、身体的な暴力(DV)による怪我や、うつ症状が出た場合は、証拠として怪我の写真や
医師の診断書を残しておきましょう。なお、言葉の暴力であるモラハラは、明確な証拠が残らず、慰謝料請求が可能なケースか判断が難しいこともありますが、録音やメッセージアプリの履歴などを証拠として使うことが考えられます。
④ セックスレス
配偶者が正当な理由がないにもかかわらず、全く性交渉に応じない場合には、慰謝料を請求できることがあります。
たとえば、以下のような事情が全て認められるような場合には、慰謝料請求できる可能性があります。- 結婚前から子どもが欲しいと話していたのに協力してくれない
- セックスレスが長期間
- 性交渉をすることに支障がないにもかかわらず、一方的に拒否される
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(2)婚姻期間が短いと請求額は低くなる可能性がある
慰謝料の金額は、さまざまな要素を総合考慮して判断することになりますが、婚姻期間の長短もその事情のひとつになります。そのため、婚姻期間が短いスピード離婚だと、一般的な慰謝料相場よりも低額になる傾向があります。
もっとも、慰謝料の金額は、具体的な事案によって異なりますので、ご自身の場合いくらになるか気になる方は弁護士にご相談ください。
2、スピード離婚で慰謝料請求できないケース
スピード離婚であるかないかに関わらず、離婚時に慰謝料が請求できないケースとしては、以下のケースが挙げられます。
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(1)性格の不一致
性格の不一致による離婚は、離婚理由としてよくある理由のひとつです。しかし、性格の不一致が離婚理由であった場合には、慰謝料請求はできません。
なぜなら、慰謝料請求をするためには、相手に有責性があることが必要になりますが、性格の不一致は、夫婦のどちらか一方が悪いというわけではないからです。スピード離婚をするケースでは、一緒に生活してみて「価値観が合わない」、「性格が合わない」と感じて離婚を決意することが多いと思いますが、その理由だけでは慰謝料請求は難しいでしょう。 -
(2)家族との不仲
結婚すると配偶者だけでなく、配偶者の両親や親戚とも付き合いをしていかなければなりません。適切な距離で付き合いができればよいですが、いきなり相手の両親と同居することになると、夫婦だけの時間を過ごすことができずストレスがたまることもあるでしょう。場合によっては、相手の家族と衝突してしまい、不仲になってしまうこともあります。
このような家族との不仲は、夫婦間の問題というよりも、ご自身と相手の家族との問題になりますので、夫婦のどちらか一方が悪いというわけではありません。そのため、家族との不仲を理由に離婚する場合には、慰謝料請求は難しいでしょう。 -
(3)不貞行為が起きた時点で夫婦関係が破綻していた
配偶者が不貞行為をした時点で、すでに夫婦関係が破綻していた場合には、不貞行為を理由に慰謝料請求することはできません。
なぜなら、すでに夫婦関係が破綻している場合、不貞行為により夫婦関係を破綻に導いたとはいえないからです。ただし、実務上、夫婦関係が破綻しているかどうかは、厳格に判断されますので、容易には認められません。
3、スピード離婚で慰謝料請求するまでの流れ
スピード離婚で慰謝料請求をする場合、以下のような流れで行います。
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(1)慰謝料請求できる原因の調査
スピード離婚で慰謝料請求をするためには、配偶者に有責性があることが必要になります。単なる性格の不一致や家族との不仲という理由だけでは、慰謝料請求はできませんので、まずは、慰謝料請求できる原因があるかどうかを調査しなければなりません。
慰謝料請求できる原因には、さまざまなものがありますので、一人で判断するのが難しいと感じる場合には、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。 -
(2)弁護士に依頼
スピード離婚で慰謝料を請求する場合、慰謝料の支払い義務の有無および金額で相手ともめる可能性があります。
適切な慰謝料の算出や支払い義務を見極めるには、離婚トラブルの解決実績がある弁護士と進めていくのがおすすめです。弁護士には、相手との交渉を一任することもできますし、調停や裁判になった場合の対応も任せることができ、時間や精神的負担も軽減することができます。 -
(3)証拠を集める
慰謝料請求をするためには、慰謝料を請求する側で、相手の有責性を立証していかなければなりません。そのためには、相手の有責性を裏付ける証拠が不可欠となります。
証拠がないまたは証拠が不十分な段階で離婚請求や慰謝料請求をしてしまうと、相手が事実を認めず、証拠の隠滅をしてしまうおそれがあります。そのため、まずは相手の有責性を裏付ける十分な証拠を集めることが大切です。
どのような証拠を集めればよいかわからないという場合には、弁護士に相談・依頼すれば証拠収集のアドバイスやサポートを受けることをおすすめします。 -
(4)示談交渉
離婚慰謝料請求は、離婚とセットで行いますので、離婚の話し合いの際に慰謝料も請求していくとよいでしょう。
ただし、あまりにも高額な慰謝料を請求すると相手の反発を招き、交渉が長期化する原因になりますので、適切な相場で慰謝料請求することが大切です。弁護士に依頼をすれば、離婚理由や離婚に至る経緯などを踏まえて、適正な金額で慰謝料請求を行えますので、スムーズに話し合いを進めることが可能です。 -
(5)調停・裁判
当事者間の話し合い(協議離婚)で、離婚や慰謝料の金額などの合意が得られない場合には、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。
離婚調停でも、お互いの合意が得られず調停不成立となった場合には、最終的な手段として離婚訴訟を提起して、裁判所に離婚の可否および慰謝料の支払い義務・金額を判断してもらう必要があります。 -
(6)慰謝料の支払い
示談交渉や調停での合意が成立した場合には、合意内容に従って、相手から慰謝料が支払われます。
裁判で慰謝料を命じる判決が確定しても、相手が任意に慰謝料の支払いに応じない場合には、強制執行を申し立てて、強制的に慰謝料を回収することも可能です。
4、スピード離婚する前に考えておくべきこと
有利に離婚手続きを進めていくためにも、スピード離婚をする前に、以下のことを考えておく必要があります。
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(1)財産分与
財産分与とは、離婚時に夫婦の共有財産を清算する制度です。そして、財産分与の対象となる財産は、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産になります。財産分与の対象となる財産の範囲は、問題になりやすいので、慰謝料と合わせて、弁護士にご相談ください。
財産分与の対象となる財産がある場合には、全体でどのくらいの資産があるかしっかりと調査して、請求するようにしましょう。
どのような調査を行えばよいかについても、弁護士に相談するのが損をしないためのより確実な方法です。
なお、スピード離婚であっても財産分与は可能ですが、スピード離婚だと婚姻期間が短いため対象となる財産がない、または少ないため財産分与により受け取ることができる金額は少額になる可能性があります。 -
(2)親権
夫婦に子どもがいる場合には、子どもの親権をどちらか一方に指定しなければなりません。
子どもの親権は、夫婦の話し合いにより決めることになりますが、スピード離婚の場合、子どもが幼いため、母親が親権者になるケースが多いです。親権の判断に当たっては、過去及び現在、お子さんの面倒をどちらが見ていたかが重要になります。そのため、夫が親権者を目指す場合は、過去のお子さんの養育状況を踏まえたうえで、実家のサポートを得るなど今後の養育環境を整えることが大切です。 -
(3)養育費
子どもの親権者となった親は、非監護親に対して、子どもの養育費を請求することができます。養育費の金額は、夫婦の話し合いで決めることになりますが、裁判所が公表している養育費算定表を利用するとスムーズに決めることができます。
スピード離婚をするケースでは、養育費の支払期間が10年以上に及ぶことも少なくありませんので、子どもに不利益が及ばないようにするためにもしっかりと取り決めをすることが大切です。養育費は月額以外にも重要な点がありますので、ご自身ではどのような条件を定めればよいかわからないときには、弁護士に相談するとよいでしょう。 -
(4)面会交流
離婚により子どもと離れて生活することになった親は、面会交流により子どもと会うことができます。
スピード離婚では、子どもも幼いため、長時間の面会は難しいケースも多いでしょう。その場合、まずは短時間から慣らしていき、徐々に時間や頻度を増やしていくなどの工夫が必要になります。面会交流は、子どもの成長・発達にとっても重要になりますので、子どもの利益を重視して面会交流の条件などを決めていくようにしましょう。
相手との間で面会交流の条件でもめている場合には、家庭裁判所の面会交流調停を利用するのも有効な手段となります。弁護士に依頼すれば、調停の申し立てや期日への同行などのサポートを受けることができますので、一人では不安な方は、弁護士への依頼を検討してみるとよいでしょう。 -
(5)離婚後の住まい・生計の確保
離婚後は、相手と別々に生活することになりますので、自宅を出ていかなければならない方は、離婚後の住まいを確保する必要があります。また、離婚後は、相手から生活費の支払いを受けることができませんので、ご自身で仕事をして収入を得る必要があります。
離婚後の生活設計が何もできていない状態で離婚をしてしまうと、路頭に迷う事態にもなりかねません。そのため、離婚後の住まいおよび生計の確保ができてから、離婚手続きをすすめるとよいでしょう。
5、まとめ
スピード離婚であったとしても、具体的な状況によっては、相手に対して離婚慰謝料を請求できます。婚姻期間が短い場合には、請求できる慰謝料額は低くなる可能性がありますが、婚姻期間以外にも慰謝料の金額を左右する要素は多いため、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
またスピード離婚でも、財産分与や親権など慰謝料以外にも決めなければならない条件があります。スムーズに離婚手続きを進めるためにも、離婚トラブルの解決実績があるベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスまでご相談ください。
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