不倫相手へ「接触禁止」を言い渡すことは可能? 効果はどの程度?
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令和4年における岐阜市の婚姻届出数は3715件、離婚届出数は897件でした。
配偶者が不倫をした場合、不倫をされた側が配偶者の不倫相手と示談する際には、示談書(和解合意書)において「接触禁止文言(接触禁止条項)」を記載することがあります。接触禁止文言は示談交渉における交渉材料になり得るため、その効果や注意点を正しく理解しておくことが大切です。
本コラムでは、不貞行為の示談書における接触禁止文言の概要や例文、効果や注意点などを、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士が解説します。
1、接触禁止文言とは
「接触禁止文言」とは、不貞行為が問題となったケースにおいて、不倫相手と被害者(不倫された側)の配偶者が互いに近づくことを禁止する文言です。
不貞行為に関する示談書には、接触禁止文言が記載されることがあります。
接触禁止文言を盛り込むことができるのは、接触禁止の内容や文言についての合意ができるときだけです。訴訟において、裁判所の判決が出るときなどは、接触禁止文言は盛り込まれません。
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(1)不貞行為の示談書には、接触禁止文言を記載することがある
配偶者が不倫をしても、不倫をされた被害者は配偶者と離婚しないことがあります。
被害者は離婚しなくても配偶者や不倫相手から慰謝料を得ることができますが、それだけでなく、多くの場合は「不倫相手が配偶者に二度と近づかないようにしたい」と考えるものでしょう。
接触禁止文言は、上記のような被害者の意向を反映するかたちで、不貞行為の示談書において記載されることがあります。
具体的には、不倫相手および配偶者に対して、法的拘束力をもって互いの接触を禁止するほか、違反した場合には違約金を請求できるようにしておくこともあります。
その結果、単に違反した場合に違約金が請求できるというだけではなく、不倫相手と配偶者の接触を思いとどまらせる抑止力としてはたらいて、再度の不貞行為を防止する効果が期待できるのです。 -
(2)接触禁止文言の例文
以下に、接触禁止文言の例文を記載します。
*甲を不貞をされた側の配偶者とした場合の例です。第○条(接触の禁止等)
乙(不倫相手)と丙(配偶者)は、本書の締結以降、面談、電話、メール、LINEその他のメッセージアプリ、SNS、手紙その他いかなる手段によっても、互いに一切接触しないことを確約する。
2. 乙は、自己の所有するスマートフォン、PCその他の電子端末および記録媒体等、ならびに書類その他の物(以下「記録媒体等」と総称する。)に記録または記載された、丙の連絡先および丙に関する情報(以下「丙の連絡先等」という。)の一切をすでに消去または破棄しており、本書の締結時点において、当該丙の連絡先等を保有していないことを確約する。本書の締結後、乙が所有する記録媒体等において、丙の連絡先等が記録または記載されているのを乙が発見したときは、当該連絡先等を使用することなく、直ちに消去または破棄しなければならない。
3. 丙は、自己の所有する記録媒体等に記録または記載された、乙の連絡先および乙に関する情報(以下「乙の連絡先等」という。)の一切をすでに消去または破棄しており、本書の締結時点において、当該乙の連絡先等を保有していないことを確約する。本書の締結後、丙が所有する記録媒体等において、乙の連絡先等が記録または記載されているのを丙が発見したときは、当該連絡先等を使用することなく、直ちに消去または破棄しなければならない。
4. 乙または丙は、前三項の規定に違反したときは、甲に対して違約金として100万円を支払う。
上記の例文の第1項では、不倫相手と配偶者の双方に対して接触禁止を義務付けています。
また、第2項と第3項では、相手の情報をすでに消去・破棄したことの確約と、今後相手の情報を発見した際には直ちに消去・破棄する義務が定められています。
第2項は不倫相手の確約・義務、第3項は配偶者の確約・義務を定めたものです。
第4項では、接触禁止等の確約・義務に違反した場合の違約金を定めています。
違約金額は、高くても100万円程度とするケースが多いといえます。
あまりにも高すぎる違約金を定めると、公序良俗違反(民法第90条)によって違約金条項の一部が無効となる可能性があることに注意してください。
2、接近禁止命令とは|接触禁止文言との違いも解説
接触禁止文言と似た用語に「接近禁止命令」がありますが、接触禁止文言と接近禁止命令は全く異なるものです。
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(1)配偶者からDVを受けている場合は、接近禁止命令の申し立てが可能
一般に「接近禁止命令」と呼ばれているのは、正確には、DV防止法(正式名称:「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)に基づく保護命令です。
配偶者・元配偶者・内縁者・元内縁者から暴力・脅迫を受けている方は、裁判所に保護命令を申し立てることができます(同法第10条)。
保護命令が発令されると、加害者は6か月間にわたるつきまとい・徘徊の禁止や、2か月間にわたる被害者の住居からの退去などが義務付けられます。
保護命令に違反した場合は刑事罰の対象となるため(同法第29条)、DV行為に対する強力な抑止力となるのです。 -
(2)接近禁止命令と接触禁止文言の違い
上述のとおり、接近禁止命令(保護命令)は、DV防止法に基づいて裁判所が発する命令です。
保護命令を遵守する義務を負うのは、配偶者・元配偶者・内縁者・元内縁者に対して暴力や脅迫を行った者とされています。
これに対して接触禁止文言は、不貞行為の示談書において記載される文言です。
裁判所によって強制されるものではなく、あくまでも当事者の合意によって記載され、締結当事者に対して法的拘束力を有します。
3、不倫相手との示談における接触禁止文言の効果・注意点
不貞行為に関する示談書に接触禁止文言を記載する際には、その法的効果と注意点を正しく理解しておくことが大切です。
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(1)接触禁止文言の効果
接触禁止文言は、その文言において明示された示談書の締結当事者に対してのみ法的効力を有します。
不倫相手と不貞配偶者の両方が示談書の締結当事者となるケースでは、不倫相手と不貞配偶者の両方が接触禁止義務を負う旨を明示しておくのがよいでしょう。
一方で、示談書の締結当事者でない者に対しては、接触禁止文言は法的効力を有しません。たとえば、被害者と不貞配偶者の二人が締結した示談書に接触禁止文言を記載しても、不倫相手に接触禁止義務を課すことはできないことに注意してください。
ただし、この例のような場合でも、違約金の定めがあれば、不倫相手が会おうとしても、不貞配偶者の側は連絡先を登録することもなく、会うことも避けるようになるでしょうから、再度の不貞行為を防ぐ効果が期待できます。 -
(2)接触禁止文言を記載する際の注意点
不貞行為の示談書において接触禁止文言を記載する場合は、以下のような点に注意する必要があります。
① 接触禁止等の内容
接触禁止等の内容については、示談交渉における論点となる可能性があります。
不倫相手や配偶者に対して厳しい義務を課す場合は、接触は一切禁止として、互いの連絡先や情報もすべて削除させることが望ましいでしょう。
しかし、不倫相手が同僚である場合などは、「仕事などで接触する機会があるために、最低限の接触は認めてほしい」と不貞配偶者や不倫相手の側から要請されることが珍しくありません。
このような要請があった場合は、実際上の都合と不貞行為の再発防止の観点を総合的に考慮しながら、受け入れるかどうか、どのような場合に接触を許すのかを適切に判断するようにしましょう。実現不可能な条項を定めることには意味がありません。
② 違約金と損害賠償の関係性
接触禁止文言に記載される違約金条項は、別段の記載がない限りは賠償額の予定であると解されます(民法第420条第3項)。
したがって、接触禁止文言への違反によって違約金を上回る損害が生じたとしても、超過分の損害賠償を別途請求することは原則としてできません。
違約金を上回る損害賠償請求の余地を残したい場合は、当該請求を排除しない旨を併記しましょう。
4、不貞行為の慰謝料請求・示談交渉は弁護士に相談を
不貞行為に関する慰謝料請求や示談交渉については、弁護士に相談や依頼をすることをおすすめします。
まず、慰謝料を確実に請求するためには、不貞行為の動かぬ証拠を確保することが重要です。
弁護士であれば、証拠を収集する方法についてアドバイスすることができます。
また、不倫相手や配偶者に対して請求できる慰謝料の金額は、不貞行為に関する具体的な事情によって異なります。
たとえば離婚するか否かに加えて、婚姻期間の長さ、不貞行為の頻度や回数、未成熟の子どもの有無、不倫相手のための金銭的支出の有無、発覚後も不貞行為を継続しているか、不貞前の夫婦の関係性などが、不倫慰謝料の金額を左右し得る要素の代表例となります。
弁護士に依頼すれば、これらの事情を検討したうえ有利にはたらく事情を主張しながら、慰謝料の増額を目指すことができます。
配偶者の不倫が発覚して、不倫相手や配偶者から適正な慰謝料を受け取りたいと希望される場合には、まずは弁護士に相談しましょう。
5、まとめ
不貞行為の示談書において接触禁止文言を定めれば、不倫相手と配偶者に接触を思いとどまらせる抑止力としてはたらくため、不貞行為の再発防止につながります。
接触禁止文言を定める際には、接触禁止等の内容や示談金額の定め方などが重要になります。
法律の専門家である弁護士のアドバイスも受けながら、適切な内容の接触禁止文言を検討しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、離婚や不貞行為などの男女問題に関するご相談を承っております。
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