親戚からの借金が返せない! 解決するための重要ポイント
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家族や親戚が万が一のときに頼りになる存在という方も多いでしょう。金銭的に苦しいとき、家族・親戚からの金銭的な援助でしのぐことは珍しくありません。
しかし、親戚などからの借金は、重い病気や失業など、やむをえないことも多く、そのまま返済できないこともあります。
今回は、親戚からの借金が返せない場合について解説していきます。
1、親戚から借りる場合と金融機関から借りる場合の違い
まずは、両者の基本的な違いを説明します。
- 好意の借金と営利目的の借金
両者のもっとも大きな違いは、前者の多くが「好意で貸してくれたお金」であるのに対し、後者は「債権者が利益を上げるための営利目的の貸し付け」という点です。 - 返済条件の違い
金融機関からの借金には例外なく利息が発生するのに対し、親戚からの借金に利息が生じることはほとんどありません。
金融機関からの借金は、契約上の期限があるのに対し、親戚からの借金は「返済できるときでよい」ことも珍しくありません。
しかし、「利息や支払期限がない」ために返済が後回しになり、返済が滞ることも珍しくありません。もともとが好意によるものだけに、返済が滞ったときに、感情的な対立が根深いものになるおそれもあります。
2、債務整理すると親戚からの借金はどうなるのか
債務整理は大きく分けると、任意整理・個人再生・自己破産の3種類になります。任意整理の多くは、金融機関や貸金業者からの借り入れを対象とし、将来の利息カットや返済期限のリスケジュールすることを主な内容としています。個人間の借金において利息や支払期限の定めがない場合は、貸金の元金を減らす場合でなければ、任意整理のメリットはあまり考えられません。
親戚からの借金があっても、個人再生と自己破産は可能ですが、注意点があります。
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(1)個人再生
個人再生は、裁判所に認可された借金の分割返済計画にしたがって、借金元金の一部を返済することで、手続き開始後の利息と元金の残金の免除を得られる仕組みです。
具体的には、- 100万円
- 住宅ローンを除く総債務額の5分の1
- 資産の評価額(清算価値)
のうち、一番高い金額を原則3年間(最長で5年間)かけて払っていくことになります。
「自己破産しなければ解決できない」と思っているようなケースでも、元金を大幅に免除される個人再生によって解決できる場合があります。財産を処分する必要がないというのも大きなメリットです。① 個人再生の対象となった借金の取り扱い
個人再生は、手続き開始時点のすべての借金が対象です(原則として種類を問わないものの、担保権の設定された借金などの一部例外は除きます)。したがって、親戚からの借金も金融機関の借金も同様に手続きの対象となります。
個人再生の対象となった借金は、裁判所の決定によって、元金が減額された上で、認可された計画にしたがって返済されます。
② 親戚からの借金を除外することは可能か?
親戚からの借金の減額を避けるために、個人再生手続きから除外したいと思うかもしれません。しかし、個人再生申立てにあたって、債権として記載をせず、債権者からの届け出もない場合は、再生計画の対象外となってしまいます。上述のように、再生計画以外の返済は原則できませんので、親戚に相談なしに、独断で手続きから除外すると、かえって大きな負担を掛けてしまうことになりかねません。 -
(2)自己破産
自己破産は、債務者のすべての債務(滞納税金などの非免責債権を除く)と資産(積極財産)を強制的に換価・清算する手続きです。清算後に残った借金は、裁判所に免責を許可してもらうことで、返済義務を免れることができます。返せない分の借金を実質ゼロにすることで、多額の借金を一挙に解決できるメリットがあります。
① 免責されると親戚の借金はどうなる?
免責が許可されると、借金の返済を法律上、強制されることがなくなります(これを「自然債務」といいます)。
したがって、免責後に債務者が自由意思で債権者に返済をすることは全く差し支えがありません(ただし、本当に自由意思かどうかは、厳しく判定されます)。
② 親戚からの借金を申告しないとどうなる?
自己破産を裁判所に申し立てるときは、すべての借金を裁判所に申告しなければなりません。親戚からの借り入れも、例外ではありません。また、個人再生の場合と同様に、親戚からの借り入れを手続きから除外すれば、手続きの対象外となってしまいます。
特定の債務を除外して自己破産を申し立てると、手続きの長期化や費用の増加を招き、最悪の場合、免責が許可されず、破産のメリットを受けられなくなってしまうこともあります。
除外した債務が手続き完了後に発覚すれば当然、その借金は免責の対象外とされますし、裁判所の調査で疑いを抱かれれば、裁判所が選任する破産管財人が徹底的に調査を行います。
特定の債務を除外せずに申し立てれば、同時廃止(めぼしい資産がなく、破産管財人を付けずに免責が許可されて終了する破産手続。管財人報酬が不要のため、費用が安く済みます)で済むにもかかわらず、管財人が選任され、負担が大きくなってしまうことにもなりかねません。申告は漏れなく、正確に行うのが鉄則です。 -
(3)債務整理前に親戚からの借金だけ返済するのは大丈夫か
自己破産前に親戚からの借金だけ返済を試みるケースは少なくありません。
しかし、「親戚の借金だけ」を返済することは絶対に避けるべきです。
自己破産をする場合には、抱えている債務を網羅的に返済することができない状態に至っています。このような場合に、特定の債務だけを返済することを偏頗弁済(へんぱべんさい:特定の債権者だけを優遇する不公平な返済行為)といいます。偏波弁済は破産法によって禁止されており、これが発覚すると、破産管財人によって返済の効力が否定されます(これを「否認権の行使」といいます)否認権を行使されると、返済の効力が取り消されますので、債権者は受け取ったお金を返さなければいけません。
そうなれば、善意の返済が逆に余計な負担になるおそれがあります。偏頗弁済(の疑い)がある場合にも、破産管財人の選任によって費用が増額になるというデメリットにつながります。
3、親戚とトラブルにならないために気をつけたい2つのこと
親戚からの借金は、人間関係の近さや、援助の動機(親戚の方の好意)から、返済されなかった場合に感情的な対立がより深くなる傾向にあります。こじれないためにも、慎重な対応が必要です。
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(1)債務整理の前に親戚にも相談する
好意で援助を受けたにもかかわらず、債務整理をすることを相談するのは、気が引けると感じるかもしれません。
しかし、特に個人再生や自己破産のような法的整理は、裁判所から債権者に通知が届きます。事前に相談せずに申し立てをすれば、債権者は困惑し、トラブルにつながることは容易に想像できます。事前に知らせて、手続きについて説明したうえで、理解を求めることが重要です。 -
(2)債務整理後もできるかぎりの対応をする
親戚からの借金を返せなければ、人間関係にも悪影響が及ぶことが少なくありません。債務整理を通じて免責などを受けたあとも、できる限り、誠実な対応を心がけることが大切です。
債務の免除などを受けた場合であっても、自由意思の返済は可能です。返済ができなくても、事情などを丁寧に説明することで、関係の悪化を回避できる可能性はあります。
4、まとめ
返済をせずに債務整理をすることは、親戚の好意を裏切る結果になることから、精神的にもつらく感じるかもしれません。誰にも相談できない結果、対応が遅れて、状況をさらに悪くしてしまうこともあります。
そんなときは、ぜひ弁護士にご相談ください。
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