兄弟に遺留分が認められない理由と兄弟でも遺産がもらえるケース

2025年02月26日
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兄弟に遺留分が認められない理由と兄弟でも遺産がもらえるケース

相続では兄弟関係でもめるケースもあります。そのため、被相続人の兄弟に遺留分はあるのか、また遺産を受け取れるケースはあるのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

結論からいうと、被相続人の兄弟に遺留分は認められていませんが、相続人となった場合は法定相続分にあたる相続財産を取得できる可能性があります。

本コラムでは、被相続人の兄弟には遺留分が認められない理由や、遺留分のない兄弟が遺産を引き継げるケースなどについて、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士が解説します。


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1、遺留分と法定相続分の違いとは?

遺留分と法定相続分は、どちらも遺産相続に関する法律用語です。以下では、それぞれの違いと具体的な範囲・割合について解説します。

  1. (1)法定相続分は遺産分割の目安となる割合

    法定相続分とは、民法で定められている各相続人(相続財産を受け取る人)が相続発生時に得る相続財産の割合です。

    ただし、遺言書がある場合は、基本的に法定相続分よりも遺言の内容が優先されます。

    また、遺産分割協議において、相続人全員の合意があれば、法定相続分以外の割合で遺産を分割することもできます。法定相続分は、この遺産分割協議における話し合いの目安にもなります。

  2. (2)遺留分は最低限保証された遺産取得分

    遺留分とは、配偶者や子どもなどの法で定められた相続人にだけ最低限保証された遺産の取得分です。被相続人の配偶者や子どもの立場に立つと、ある程度遺産を受け取れるだろうという期待が生まれていますから、これに反する遺言がある場合でも、その期待を裏切らないよう、法律で最低限の相続財産を受け取れるようにしているのです。

    遺言書があれば、遺産を誰がどの程度相続するのか決まってしまいますが、特定の人に財産が多く譲渡されると、この遺留分が侵害される可能性があります。

    不公平な遺言などにより、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求という手続きをすることで最低限の遺産の取り戻しが可能です。

    ただし、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、遺留分侵害額請求を行うことはできません。

  3. (3)法定相続分の範囲と割合

    誰が法定相続人となるか、また、相続する割合はいくらになるのかは民法で定められています。被相続人の配偶者は常に法定相続人です。配偶者以外の親族は、子ども(孫など)・直系尊属(親や祖父母など)・兄弟姉妹(甥・姪)の順で配偶者と一緒に法定相続人になります。

    そして、法定相続分の割合は、誰が法定相続人となるかによって大きく異なります。相続人の組み合わせによる法定相続分の一例は、以下のとおりです。

    相続人 相続割合
    配偶者と子ども 配偶者:2分の1
    子ども:2分の1
    配偶者と直系尊属
    ※子どもがいない場合
    配偶者:3分の2
    直系尊属:3分の1
    配偶者と兄弟姉妹
    ※子ども及び直系尊属がいない場合
    配偶者:4分の3
    兄弟姉妹:4分の1


    たとえば相続人が配偶者と子どもが2人であった場合には、子ども1人あたりの相続割合は、2分の1を人数で割るため4分の1となります。同様に配偶者と2人の兄弟姉妹が相続人であった場合、兄弟姉妹の法定相続分は1人あたり8分の1ずつです。

  4. (4)遺留分の範囲と割合

    遺留分が認められているのは、被相続人の配偶者・子ども・直系尊属のみです。遺留分の割合は、相続人の組み合わせによって以下のように決められています。

    相続人 全体の遺留分 相続人ごとの遺留分
    配偶者と子ども 2分の1 配偶者:4分の1
    子ども:4分の1
    配偶者と直系尊属 2分の1 配偶者:3分の1(6分の2)
    直系尊属:6分の1
    配偶者のみ 2分の1 配偶者:2分の1
    子どものみ 2分の1 子ども:2分の1
    直系尊属のみ 3分の1 直系尊属:3分の1


    法定相続分とは割合が異なるため、混同しないように注意しましょう。

    なお、遺留分は基本的に金銭で支払われ、不動産や有価証券など遺産そのものの取り戻しは原則としてできません。

2、被相続人の兄弟は遺留分を請求する権利がない理由

被相続人の兄弟には、遺留分を請求する権利が認められていません。兄弟が遺留分を請求できない理由として、主に以下の3つが挙げられます。

  1. (1)被相続人との相続関係が遠いため

    被相続人の兄弟には遺留分が認められない理由のひとつは、法定相続人としての優先順位が低いためです。

    民法では、法定相続人の順位を被相続人の子ども・直系尊属・兄弟姉妹と定めており、兄弟姉妹は第3順位となっています。上位の順位にあたる相続人がいる場合、下位の相続人に相続権はありません。

    兄弟姉妹は法定相続分の割合が少ないこととの均衡から、遺留分もないという考え方が一般的です。

  2. (2)基本的に兄弟は別生計であるため

    兄弟間は基本的に別生計である点も、遺留分が認められない理由です。

    配偶者や子ども・両親などは被相続人と生活を共にしている場合もあり、被相続人の死亡によって経済的に困窮する可能性があります。しかし、兄弟は被相続人とは別で生活しており、自活しているケースが一般的です。

    財産を継承しなくても生活に影響する可能性が低いことから、兄弟姉妹には遺留分が認められていないと考えられています。

  3. (3)兄弟には代襲相続があるため

    被相続人の兄弟に代襲相続があるのも、遺留分が認められない理由のひとつとされています。

    代襲相続とは、本来相続人となる人が相続開始時点ですでに死亡していた場合などに、その子どもが相続権を受け継ぐ仕組みです。

    兄弟姉妹には代襲相続が認められており、相続人となる兄弟姉妹が亡くなっている際は、その子どもである甥や姪が相続人になります。そのため、被相続人の兄弟姉妹に遺留分を認めると、代襲相続人である甥や姪の遺留分も認めることになるのです。

    兄弟姉妹に遺留分を認めた場合、遠い関係性の甥や姪によって被相続人の遺言内容が1部否定されてしまう可能性があります。
    そのため、兄弟姉妹には遺留分が認められないとされています。

3、被相続人の兄弟でも遺産を引き継ぐことができるケース

被相続人の兄弟には遺留分が認められていませんが、遺産を引き継ぐことができるケースはあります。兄弟が遺産を受け取るための具体的な方法について、以下で確認していきましょう。

  1. (1)生前に兄弟に財産を残すことを記載した遺言書を作成してもらう

    被相続人の兄弟に財産を残す意思がある場合、生前に遺言書を作成してもらうのが有効です。遺言書の内容は基本的に法定相続分よりも優先されるため、兄弟に財産を残す旨が記載されていれば、本来相続人ではなかったはずの兄弟も遺産を受け取れます

    遺言書を作成する際は、無効となってしまわないよう、弁護士に相談するなどして、要件をしっかり確認するようにしましょう。また、本来の相続人の遺留分も考慮した内容にする必要があります。

  2. (2)遺言の無効を主張する

    兄弟姉妹が法定相続人であるにもかかわらず、遺言書の内容によって相続できない場合などは、遺言の無効を主張するのも有効な手段となります。

    遺言の無効を主張できるかどうかは、以下のポイントを参考に検討してみましょう。

    • 遺言書の形式に不備がないか
    • 被相続人が認知症などで遺言能力がない状態で作成されていないか
    • 遺言の中身が公序良俗違反の内容でないか


    遺言の無効を主張し、他の相続人の合意を得られれば、法定相続分の遺産を受け取れる可能性があります。

  3. (3)寄与分を請求する

    寄与分が認められれば、相続人ではない兄弟も遺産を取得できます。

    寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした人に対して、貢献度に応じた遺産の分配を認める制度です。兄弟が被相続人の事業を手伝っていたり、介護を行っていたりした場合、寄与分を請求できる可能性があります。

    ただし、寄与分を立証するのは難しく、通常の親族としての扶養以上の被相続人への貢献を求められますし、ほかの相続人と揉める可能性もあるため、ハードルはかなり高いといえます。

4、兄弟や遺留分に関する相続トラブルを、弁護士に相談するメリット

相続に関する問題は複雑で、いざ相続が起こった場合に相続に関する法的知識をご自身ですぐに理解し使いこなすことは難しいでしょう。このような場合に、弁護士へ相談すると以下のようなメリットがあります。

  1. (1)遺言書の内容について相談できる

    遺言書の内容に疑問を持っている場合、弁護士に相談すれば、その疑問がすぐ解決できます

    また弁護士であれば、遺言書の要件や作成方法に関しても熟知しています。特に相続人ではない兄弟が遺産を受け取りたい場合、遺言書は重要な要素のひとつです。

    遺言書の有効性や内容の妥当性について確認したい場合は、弁護士への相談を検討してみてください。

  2. (2)訴訟などに発展した場合は手続きを任せられる

    遺産分割に関するトラブルは、調停や訴訟に発展する可能性があるため注意が必要です。弁護士に依頼することにより、相続手続きに限らず、訴訟などに発展した場合の手続きも任せられる、という大きなメリットがあります

    裁判に関する手続きを相続人自身で行うとなると、膨大な時間と労力がかかるケースがほとんどです。弁護士には申し立て手続きから証拠収集・主張の整理など、裁判手続き全般を任せられるため、負担を大幅に軽減できるでしょう。

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5、まとめ

被相続人の兄弟は、被相続人との関係が相続人の中では遠いなどの理由によって、遺留分の受け取りが認められていません。しかし、遺言書を作成してもらうなどの方法を用いれば、遺産を受け取れるケースがあると考えられます。

相続問題についての知見が豊富なベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士であれば、弁護士が個別の状況に応じたアドバイスやサポートを行うことが可能です。兄弟の相続割合など、遺産相続に関する疑問や不安がある場合はまずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています