交通事故後にてんかん症状が! 後遺障害として認められるのか
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岐阜県警察が公表している交通事故発生状況に関する統計資料によると、2023年中に岐阜県内で発生した交通事故件数は3077件でした。前年の件数が2895件でしたので、それと比較すると182件も増加していることがわかります。
交通事故により頭部を強打すると、「てんかん」を発症することがあります。てんかんの症状があらわれると、日常生活にも大きな支障が生じてしまいますので、後遺障害認定基準を理解して、適正な等級認定を受けることが重要です。
今回は、交通事故によりてんかんを発症した場合の対処法と後遺障害の認定基準について、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故以降てんかんの発作が出たらどうすべきか
交通事故によりてんかんの発作が出たときはどのように対処すればよいのでしょうか。以下では、てんかんの原因と症状、てんかん発作が出たときの対処法について説明します。
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(1)交通事故で発症するてんかんの原因と症状
てんかんとは、脳にある神経細胞の異常な電気活動により生じる「てんかん発作」を繰り返し起こす状態をいいます。
てんかんには、原因不明の「特発性てんかん」と頭部外傷などを原因とする「外傷性てんかん」の2種類があり、交通事故により発症するてんかんは、外傷性てんかんにあたります。
このような外傷性てんかんを発症した場合には、以下のような症状があらわれます。- 身体の一部が固くなる
- 手足がしびれる
- 耳鳴りがする
- 動機や吐き気を生じる
- 意識を失う
- 言葉が出にくくなる
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(2)てんかんの発作が出たらすぐに医師に相談する
外傷性てんかんの治療は、薬物療法が中心となりますので、てんかんの発作が出たときは、すぐに医師に相談することが大切です。早期に医師の相談することは、後述する後遺障害等級認定を受けるためにも重要なポイントとなります。
身体に少しでも異常を感じるときは、自己判断ではなく必ず医師の判断を仰ぐようにしましょう。
2、治療しても外傷性てんかんが治らなかったら?
病院で治療を継続してもそれ以上治療効果が期待できない状態(症状固定)になった後も、外傷性てんかんの症状が残っているときは、後遺障害等級認定の申請をすることが考えられます。
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(1)後遺障害等級の手続きとは
後遺障害等級は、具体的な症状の程度及び内容に応じて第1級から14級までの等級が定められており、認定された等級に応じて、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の金額が算定されます。
認定される等級が高いほど、得られる慰謝料・逸失利益の金額が高くなりますので、適正な等級認定を受けることが重要になります。 -
(2)適正な等級認定を受けるには弁護士に相談すべき
後遺障害等級認定の手続きには、「事前認定」と「被害者請求」という2つの方法があります。
- 事前認定とは
加害者側の保険会社にすべての手続きを任せる方法です。被害者自身に手続きの負担はほとんどありません。
しかし、賠償金の支払いをする保険会社が手続きの対応をするため、適切な後遺障害等級認定を受けるための十分な協力は得られず、賠償額が低額になってしまう可能性があります。 - 被害者請求とは
被害者側で後遺障害等級認定の申請を行うため、被害者にとって有利な結果を出しやすいというメリットがあります。
一方で、デメリットとして、弁護士をつけない場合は、被害者自身で後遺障害等級認定手続きに必要となる資料の収集や作成をしなければなりませんので、事務負担が大きくなることがあげられます。
もっとも、事務負担は、弁護士に依頼することで大幅に軽減することができます。特に外傷性てんかんは、後遺障害等級の認定基準をしっかりと把握していなければ適正な等級認定を受けるのは困難ですので、交通事故事件処理の実績がある弁護士に依頼するのがおすすめです。
保険会社に任せきりでは適正な後遺障害等級認定を受けられない可能性がありますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
- 事前認定とは
お問い合わせください。
3、外傷性てんかんで認定されうる後遺障害等級と慰謝料
外傷性てんかんの症状が残ってしまった場合に認定される可能性がある後遺障害等級は、以下の通りです。
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(1)後遺障害等級12級13号
後遺障害等級12級13号は、「局部に頑固な神経症状を残す」場合に認定される等級です。
てんかんで認定される具体的な判断基準は、以下の通りです。発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波(きょくは)を認めるもの
すなわち、てんかん発作が生じていなくても、脳波上、異常が認められる場合には後遺障害等級12級13号が認定されます。
後遺障害等級が認定されると後遺傷害慰謝料が支払われます。後遺障害慰謝料の算定基準は、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3種類があります。自賠責保険準は賠償額が最も低い基準で、弁護士基準は裁判において認められる金額をベースにしているため賠償額が高い基準です。任意保険基準は、自賠責保険基準と弁護士基準の中間に位置し、任意保険会社がそれぞれ独自の基準を運用しています。同じ後遺障害等級が認定された場合でも、適用される基準によって賠償金額が大きくかわってきます。そのため、保険会社の話だけで決めるのではなく、弁護士に依頼し、弁護士基準で請求をしていくことをおすすめします。【後遺障害等級12級13号が認定された場合の後遺障害慰謝料の相場】- 自賠責保険基準:94万円
- 弁護士基準:290万円
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(2)後遺障害等級9級10号
後遺障害等級9級10号は、「神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限される」場合に認定される等級です。
具体的な判断基準としては、以下のようになっています。数か月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるものまたは服薬継続によりてんかんの発作がほぼ完全に抑制されているもの
てんかん発作が生じていても比較的軽微なものについては、後遺障害等級9級10号が認定されます。
【後遺障害等級9級10号が認定された場合の後遺障害慰謝料の相場】- 自賠責保険基準:249万円
- 弁護士基準:690万円
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(3)後遺障害等級7級4号
後遺障害等級7級4号は、「神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができない」場合に認定される等級です。
具体的な判断基準としては、以下のようになっています。転倒する発作等が数か月に1回以上あるものまたは転倒する発作等以外の発作が1か月に1回以上あるもの
【後遺障害等級7級4号が認定された場合の後遺障害慰謝料の相場場】- 自賠責保険基準:419万円
- 弁護士基準:1000万円
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(4)後遺障害等級5級2号
後遺障害等級5級2号は、「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができない」場合に認定される等級です。
具体的な判断基準としては、以下のようになっています。1か月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が「意識障害の有無を問わず転倒する発作」または「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」であるもの
【後遺障害等級5級2号が認定された場合の後遺障害慰謝料の相場】- 自賠責保険基準:618万円
- 弁護士基準:1400万円
4、交通事故被害にあったらすぐに弁護士に相談を!
交通事故被害に遭ったときは、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)適切な後遺障害等級が認定されるようサポートできる
後遺障害を伴う交通事故であった場合、認定される後遺障害等級によって賠償金の金額が大きく異なります。
適切な後遺障害等級認定を受けるためには、交通事故弁護の実績がある弁護士のサポートが不可欠となります。
後遺障害等級認定の手続きを保険会社に任せきりにしてしまうと、適切な後遺障害等級認定を受けるために必要な資料の提出ができないケースも少なくありません。
弁護士であれば、適切な後遺障害等級認定に向けたサポートができますので、交通事故で怪我を負ったときは、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。 -
(2)もっとも高い算定基準で請求できる
前述の通り、交通事故の慰謝料の算定基準には、以下の3つの基準があります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準(裁判所基準)
このうち、被害者にとってもっとも有利な基準は、弁護士基準になります。弁護士基準を用いて保険会社と交渉をするためには、弁護士に示談交渉を依頼するのが必須となります。
弁護士に示談交渉を依頼することで、保険会社が提示する賠償金の金額を増額できる可能性があります。少しでも賠償金を増やしたいという方は、まずは弁護士に相談するようにしましょう。 -
(3)ベリーベスト法律事務所の解決事例
ベリーベスト法律事務所では、交通事故に関する事案を多数取り扱っております。
以下では、当事務所が扱った事案のうち、交通事故により外傷性てんかんが問題となった事例を紹介します。【事故状況】
Aさんは、バイクで新聞配達の業務をしていたところ、交差点で対向右折車と衝突して転倒し、脳挫傷等の傷害を負ってしまいました。
【当事務所の対応とその結果】
Aさんから依頼を受けた当事務所の弁護士が各種意見書、脳波検査など必要な資料をそろえた上で、後遺障害申請をしたところ、高次脳機能障害と外傷性てんかんを総合的に評価し、併合6級(神経系統の機能または精神の障害として7級4号+外貌醜状として12級14号)の認定を受けることができました。
他方、労災においても後遺障害申請をしたところ、当初は、併合8級との結論が出ましたが、審査請求により自賠責の判断と同様に併合6級の認定を受けることができました。
これをもとに相手方代理人と交渉したところ、ほぼ当方の請求どおりの内容で示談することができました。
5、まとめ
交通事故で外傷性てんかんの症状が発症した場合には、後遺障害申請をすることで、症状に応じた後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。
適切な認定を受けるためには、被害者側で必要な資料をそろえ、検査を行うなどの対応が必要になります。適正な等級認定を受けるには、経験豊富な弁護士のサポートが不可欠となりますので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
交通事故で外傷性てんかんと診断された方は、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスまでお気軽にご相談ください。
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