交通事故の治療日数(期間)と通院日数の違いは? 数え方や慰謝料請求を解説

2025年02月20日
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交通事故の治療日数(期間)と通院日数の違いは? 数え方や慰謝料請求を解説

交通事故の慰謝料算定の際、病院への「通院日数」は主な考慮要素となりますが、「治療日数(期間)」も慰謝料算定の重要な要素のひとつです。

正確な慰謝料を計算するためには、治療日数と通院日数の違いや数え方などをしっかりと理解しておくことが大切です。

今回は、交通事故の治療日数と通院日数の違いや交通事故の慰謝料の計算方法などについて、ベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスの弁護士が解説します。


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1、交通事故で請求できる慰謝料の種類

交通事故で請求できる慰謝料には、以下の3つの種類があります。

  1. (1)入通院慰謝料

    入通院慰謝料とは、交通事故により怪我をしたことで生じた精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。入通院慰謝料のことを「傷害慰謝料」と呼ぶこともあります。

    交通事故により怪我をすると痛みを抱えながら病院への通院や日常生活を送らなければなりませんので、被害者には多大な精神的苦痛が生じます。このような精神的苦痛の程度は、目に見えるものではありませんので、交通事故の慰謝料算定の実務では、治療日数(通院期間)や通院日数をもとに慰謝料を計算するのが一般的です。

  2. (2)後遺障害慰謝料

    後遺障害慰謝料とは、交通事故により後遺障害が残ったことで生じた精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。

    後遺障害が生じると運動機能などに制限が生じてしまいますので、これまでと同様に生活することができなくなり、被害者には多大な精神的苦痛が生じます。後遺障害慰謝料の金額は、自賠責保険への後遺障害申請の結果、認定された後遺障害等級に基づいて算定されますので、治療日数(通院期間)や通院日数が、直接的に後遺障害慰謝料の金額を決めるわけではありません。

    しかし、適正な後遺障害等級認定を受けるには、適切な頻度や日数で治療を行う必要があり、通院日数、通院頻度が少なく、治療期間が短いケースでは、適正な後遺障害等級認定を受けられない可能性もあります。そのため、通院の頻度・日数については、弁護士に一度相談することがおすすめです

    そのため、後遺障害慰謝料の算定にあたっても、治療日数(通院期間)や通院日数が重要な要素となります。

  3. (3)死亡慰謝料

    死亡慰謝料とは、交通事故により被害者が死亡したことで生じた精神的苦痛に対しして支払われる慰謝料です。

    死亡慰謝料は、交通事故で死亡した本人の無念さを補填(ほてん)するものになりますが、本人は事故により死亡していますので、本人の遺族が代わりに請求していくことになります。

2、交通事故における治療日数と通院日数の違い

交通事故の慰謝料のうち入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の算定にあたっては、治療日数や通院日数が重要な要素となります。では、治療日数と通院日数にはどのような違いがあるのでしょうか。以下で詳しくみていきましょう。

  1. (1)交通事故における治療日数

    交通事故における治療日数とは、治療開始日から治療終了日までの日数をいいます。治療日数のことを「治療期間」と呼ぶこともあります。治療日数は、実際に病院に通院をした日数ではなく、治療開始日から治療終了日までの「期間」が対象になります。

    たとえば、4月1日から9月30日まで交通事故の怪我の治療のために病院に通院をした場合、治療日数は183日となります。

    交通事故における治療終了日は、医師から「完治」(治癒)または「症状固定」と診断された時点になります。症状固定とは、一定の症状が残っている状態で、悪化もしないが、これ以上治療を継続しても改善の見込みもないと判断される状態をいいます。

    症状固定として治療終了となった場合、後遺障害認定の申請をすることにより、後遺症の内容に応じた金額の後遺障害慰謝料を請求できる可能性があります。

  2. (2)交通事故における通院日数

    交通事故における通院日数とは、怪我の治療のために実際に病院に治療した日数をいいます。通院日数は、実際に通院した日数(実通院日数)を基準に計算する点で、実通院日数とは無関係に期間を計算する治療日数と異なります。

    たとえば、4月1日から9月30日まで交通事故の怪我の治療のために週2回の通院をした場合、通院日数は、26週×2回=52日となります。

3、慰謝料の計算方法

交通事故の慰謝料はどのように計算するのでしょうか。以下では、交通事故の慰謝料算定に用いられる3つの算定基準と各慰謝料の計算方法を説明します。

  1. (1)慰謝料には3つの算定基準がある

    慰謝料は、被害者が被った精神的苦痛を金銭化したものになりますが、精神的苦痛という目に見えない指標では公正な算定が困難といえます。

    そこで、交通事故の賠償実務では、客観的な指標に基づく算定基準により慰謝料の算定が行われています。

    実際に慰謝料の算定に用いられる算定基準には、以下の3つの種類があります。

    • 自賠責保険基準:自賠責保険が慰謝料算定に用いる基準
    • 任意保険基準:任意保険会社が慰謝料算定に用いる基準
    • 裁判所基準(弁護士基準):裁判所や弁護士が慰謝料算定に用いる基準


    このうち、慰謝料の金額がもっとも高額になるのは、裁判所基準です。裁判所基準は弁護士のサポートが重要となるため、早めに交通事故の実績がある弁護士に相談することが重要です

  2. (2)交通事故の慰謝料の計算方法

    交通事故の慰謝料の計算方法は、慰謝料の種類ごとに異なっていますので、以下では、入通院慰謝料の計算方法を紹介します。なお、算定基準の「任意保険基準」は具体的な計算方法が外部に公表されていないため割愛しますが、弁護士を入れずに慰謝料の金額を交渉した場合に保険会社が提示する金額(任意保険基準による計算結果)は、裁判基準・弁護士基準に比して大幅に少額であることも珍しくありません。

    【自賠責保険基準】
    自賠責保険基準では、日額の慰謝料が4300円と定められています。そのため、次の計算方法により、入通院慰謝料の計算を行います。

    慰謝料=日額4300円×対象日数


    自賠責保険基準での対象日数は、以下のうちいずれか少ない方の日数が基準となります。

    • 治療期間
    • 実通院日数×2


    たとえば、4月1日から9月30日まで交通事故の怪我の治療のために週2回の通院をしたと仮定すると、入通院慰謝料は以下の通りになります。

    1. ① 治療期間:183日
    2. ② 通院日数:26週×2回=52日×2=104日
    対象日数:② 104日
    入通院慰謝料の金額:104日×4300円=44万7200円


    【裁判所基準(弁護士基準)】
    裁判所基準では、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)」(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行)に記載された基準により入通院慰謝料の算定を行います。この書籍は、実務では「赤い本」と呼ばれています。

    赤い本では、怪我の内容・程度により、「別表Ⅰ」「別表Ⅱ」という2つの基準が設けられ、以下のとおり入通院慰謝料の金額が基準化されています。むち打ち症等で他覚所見がない場合は、「別表Ⅱ」を使います。

    裁判基準(弁護士基準)での対象日数は、以下のうちいずれか少ない方が基準となります。

    • 治療期間
    • 通院が長期に渡る場合、実通院日数×3.5


    「裁判所基準(いわゆる赤い本)別表Ⅰ:原則」(単位:万円)
    「裁判所基準(いわゆる赤い本)別表Ⅱ:むち打ち症等で他覚所見がない場合」(単位:万円)

    たとえば、むちうちで4月1日から9月30日まで交通事故の怪我の治療のために週2回の通院をした場合、治療期間は183日となりますので、上記の表(別表Ⅱ)では6か月+3日分の慰謝料が裁判所基準での入通院慰謝料となります。
    すなわち、89万円+8000円=89万8000円です。

  3. (3)後遺障害慰謝料の計算方法

    後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級に応じて、以下のように慰謝料を計算します。

    等級 後遺障害慰謝料の金額
    自賠責保険基準 裁判所(弁護士)基準
    別表第1 1級 1650万円 2800万円
    2級 1203万円 2370万円
    別表第2 1級 1150万円 2800万円
    2級 998万円 2370万円
    3級 861万円 1990万円
    4級 737万円 1670万円
    5級 618万円 1400万円
    6級 512万円 1180万円
    7級 419万円 1000万円
    8級 331万円 830万円
    9級 249万円 690万円
    10級 190万円 550万円
    11級 136万円 420万円
    12級 94万円 290万円
    13級 57万円 180万円
    14級 32万円 110万円
  4. (4)死亡慰謝料の計算方法

    【自賠責保険基準】
    自賠責保険基準では、死亡した被害者本人の慰謝料と被害者の遺族の人数により決められた遺族の慰謝料を合計して死亡慰謝料の金額を計算します。

    死亡慰謝料
    =被害者本人の慰謝料+遺族固有の慰謝料+扶養者の有無に応じて加算される慰謝料


    具体的には、以下のような金額になっています。

    被害者本人の慰謝料
    • 被害者本人に対する慰謝料:400万円

    遺族固有の慰謝料
    • 遺族が1名のとき:550万円
    • 遺族が2名のとき:650万円
    • 遺族が3名以上のとき:750万円

    扶養者の有無に応じて加算される慰謝料
    • 被害者に被扶養者がいれば200万円加算


    【裁判所基準(弁護士基準)】
    裁判所基準においても、死亡した被害者本人の慰謝料と被害者の遺族の慰謝料を合計したものが死亡慰謝料となります。ただし、裁判所基準では、被害者の家庭内の立場に応じて、以下のように金額が定められています。

    • 一家の支柱:2800万円
    • 母親、配偶者:2500万円
    • その他:2000万円~2500万円

4、交通事故の慰謝料請求を弁護士に相談するメリット

以下のようなメリットがありますので、交通事故の慰謝料請求をお考えの方は、弁護士に相談するのがおすすめです。

  1. (1)より高額な慰謝料を請求できる可能性がある

    前述の通り、交通事故の慰謝料には、3つの算定基準があり、そのうちもっとも有利な基準は裁判所基準になります。

    しかし、裁判所基準を用いた慰謝料を請求するためには、弁護士に依頼して示談交渉を行う必要があります。被害者自身での示談交渉では、裁判所基準まで慰謝料額を引き上げることはできません。

    事故後も安定した生活を送るために、十分な慰謝料を請求したいという場合には、弁護士への依頼が不可欠といえるでしょう

  2. (2)過失割合について見直してくれる

    交通事故の発生に関して、被害者にも落ち度がある場合には、過失割合が争点になる可能性があります。

    被害者にも過失割合が生じる場合、過失相殺によって被害者が受け取ることができる賠償額が減少してしまいますので、適正な過失割合を認定することが重要です。過失割合の認定にあたっては、過失割合の認定の仕組みや有利な認定を受けるための証拠収集などが必要になりますので、専門家である弁護士のアドバイスやサポートが必要になります。

    現状の過失割合に納得ができないという場合には、過失割合の見直しのために弁護士に相談してみるとよいでしょう。

  3. (3)保険会社とのやり取りを任せられる

    交通事故の示談交渉は、被害者が加害者側の保険会社の担当者との間で行わなければなりません。知識や経験で圧倒的に劣る被害者が保険会社の担当者を相手に有利な条件で示談をするのは困難といえますので、保険会社とのやり取りは弁護士に任せるのが安心です。

    弁護士に示談交渉を依頼すれば、基本的にはすべての手続きを弁護士に一任することができるため、被害者の負担は大幅に軽減するでしょう。

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5、まとめ

交通事故の治療日数(通院期間)とは、治療を開始してから完治するまでの期間を指し、通院日数とは、実際に通院した日数を指します。このような治療日数と通院日数は、交通事故の慰謝料を計算するために用いられますので、事故により治療中の方は、適切な頻度で通院を継続することが大切です。

また、交通事故慰謝料は算出基準によって、受け取れる金額が大きく異なります。最も高額な裁判所基準(弁護士基準)を利用するためには、交通事故トラブルの実績がある弁護士に依頼することがとても大切です。

ベリーベスト法律事務所には、交通事故専門チームがございます。実績ある弁護士が、必要に応じて医療コーディネーターと連携し、最適な慰謝料請求のために尽力いたします。まずはベリーベスト法律事務所 岐阜オフィスまでお気軽にご相談ください。

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